著者
福井 敬一 佐藤 英一 新堀 敏基
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

2015年7月7日より,正式運用を開始した静止気象衛星ひまわり8号は先代のひまわり7号(MTSAT-2)に対し,大幅な機能強化が図られた.搭載された可視赤外放射計(Advanced Himawari Imager, AHI)は観測波長帯数が5バンド(可視1,赤外4)から16バンド(可視3,近赤外3,赤外10)へと,空間分解能もほぼ倍に高解像度化した.さらに,全球の観測頻度も60分ごとから10分ごとに向上するとともに,日本域を観測する領域観測1,2(東西2000 km,南北1000 km)や火山観測や台風観測などに利用される東西南北1000km四方の可動領域(領域観測3.機動観測)では常時2.5分ごとの観測も可能となっている.機動観測では台風観測時以外はカムチャッカの火山を対象に観測している時間が多い(2018年1月末現在はマヨン火山を含む領域を観測している).また,東西1000km,南北500kmの領域2か所(領域観測4,5.ランドマーク観測)を常時約30秒ごとに観測している.領域観測4,5の主目的は,位置合わせや月・深宇宙を利用した感度校正(Bessho et al., 2016)であるが,軌道が安定していることもあり,火山噴火を主対象とした領域を観測することも多く,2018年1月末現在,領域4,5は各々,インドネシアのアグン火山,桜島を含む領域を観測している.ひまわり8号の高解像度・高頻度観測によってMTSATに比べ小さな噴火も観測可能となるとともに,多バンド化によって,火山灰雲の高度推定精度が向上し,火山灰雲の光学的厚さや粒径などの情報を含む火山灰プロダクトの開発が進められている(Hayashi et al., 2016).さらに,火山ガス(SO2)の検出も可能となってきている(例えば,Ishii et al., 2018).桜島を含む領域では,ひまわり30秒データとともに,全球観測,日本域観測のデータも利用できるため,10分毎に4回,1分間で4枚の画像を取得できる時間帯がある.さらに,同じ領域を領域観測3,4,5で観測することも可能であり,このような運用を行えば,さらに高頻度の観測も可能になる.噴火直前の火口の温度状況や噴火直後の噴煙柱の成長の様子を捉えるため,ひまわり8号の30秒ごとの超高頻度観測(Super-Rapid Scan)データを利用した研究を開始した.Fukui et al. (2017) では桜島爆発直後の噴煙柱についてバンド3(波長0.64μm,空間分解能500m)の30秒毎データと桜島周辺で実施している高密度気象レーダーデータ(Sato et al., 2017),監視カメラ映像データとを比較検討した.今回はバンド3データと赤外データから求めた桜島爆発時の噴煙柱の上昇過程と噴煙上端の温度の時間推移から見た噴煙柱の成長過程について報告する.参考文献Bessho, K. et al. (2016) An Introduction to Himawari-8/9 —Japan’s New-Generation Geostationary Meteorological Satellites. J. Meteor. Soc. Japan, 94, 151-183, DOI:10.2151/jmsj.2016-009.Fukui, K. et al. (2017) Observations of volcanic eruption columns using Himawari-8 Super-Rapid Scan 30-sec imagery. JpGU-AGU Joint Meeting 2017, MIS02-P03Hayashi, Y. et al. (2016) Observation of volcanic ash clouds by Himawari-8. JpGU 2016, MIS26-06.Sato, E. et al. (2017) Volcanic ash plume observation by weather radars. JpGU-AGU Joint Meeting 2017, MIS02-P01.Ishii, K. et al. (2018) Using Himawari-8, estimation of SO2 cloud altitude at Aso volcano eruption, on October 8, 2016. Earth, Planets and Space, 70:19, DOI:10.1186/s40623-018-0793-9.
著者
新堀 敏基 相川 百合 福井 敬一 橋本 明弘 清野 直子 山里 平
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.13-29, 2010 (Released:2010-12-28)
参考文献数
60
被引用文献数
6 10 1

気象庁では、火山現象予報の一つとして、2008年3月31日から降灰予報の業務を開始した。この論文では、降灰予報を高度化するために気象庁・気象研究所で開発している降灰予測システムを用いて、降灰量の量的予測を行う方法について論じる。降灰予測の方法は、まず初期値となる噴煙柱モデルを、仮想質量をもつ火山灰トレーサーで構成する。次に、トレーサーの時間発展を移流拡散モデルにより計算する。火山灰移流拡散モデルは、気象場に気象庁メソ数値予報モデル(MSM)を用いたラグランジュ記述のモデルであり、移流・拡散・降下・沈着の各過程を考慮している。そして沈着したトレーサーの仮想質量から、単位面積あたりの重量(面密度)として降灰量を算出する。噴煙柱モデルに気象レーダーで観測された噴煙エコー頂高度を用い、降灰量の算出にMSMより細かい水平格子間隔を用いて、本方法を2009年2月2日浅間山噴火の事例に適用した。観測値と比較して、降灰域の定性的な特徴は概ね予測でき、分布主軸上の降灰量も同じオーダーで予測可能であることが示された。