著者
門田 領 相庭 温臣 望月 眞人
出版者
一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
雑誌
Journal of Spine Research (ISSN:18847137)
巻号頁・発行日
vol.13, no.7, pp.999-1004, 2022-07-20 (Released:2022-07-20)
参考文献数
9

はじめに:市販フローアブル止血剤は頑固な硬膜外静脈叢出血に対して強力な止血作用とドラッグデリバリー性能に優れるが,償還価格が高額であるため腰椎単椎間除圧など実際に頻度の高い脊椎手術ではルーチン使用はできずその恩恵にあずかれない.今回この問題を解決する方法を考案したので紹介する.技術報告:微繊維性コラーゲン製剤をトロンビン希釈液に溶解し軽く10秒ほど撹拌するのみで調整可能である.この混合溶液を注射筒に充填し出血部位に散布,上からサージカルコットンをのせ吸引すると圧迫不要で速やかかつ容易に止血される.止血原理として微繊維性コラーゲン製剤による1次止血作用に加えトロンビンによる2次止血作用により凝血塊の安定化がもたらされる.また微繊維性コラーゲン製剤は単剤では鑷子に粘着するなど扱いが困難だがフローアブルな剤形とすることで必要最小量のみが出血点へ自動的に到達し止血効果を高めると同時にこの難点も克服できる.加えて調整が簡単で償還価格が安価である点などが利点であり,部位を問わず適用可能で汎用性が高い.結語:優れた効果を持つ止血剤の混合調整法について報告した.