- 著者
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王尾 和寿
村山 祐司
温井 達也
相澤 道代
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2014, 2014
近年、通学途中の児童と自動車の接触事故、震災や竜巻被害の発生などを契機として、通学路における児童の安全確保は喫緊の課題となっている。本研究では通学路の不安箇所を把握し改善につなげるため、地域に居住し地域を熟知している保護者の視点で不安箇所を抽出し、その属性を用いて空間的特性を明らかにした。データ取得については、地域の危険箇所や不安箇所に関するデータ収集を行うため、2012年10月および2013年12月に、茨城県つくば市内のN小学校区において、児童と保護者による通学路点検を実施した。集団登校に保護者が同行し、通学路の不安箇所を、交通、犯罪、災害の視点でチェックし、GISデータベースを作成した。次にカーネル密度推定により、不安箇所の分布特性を把握し、属性情報と共に分析を行った。 結果として2012年では108枚の不安箇所マップを回収し、393地点の不安箇所(交通不安244、犯罪不安86、災害不安63)を取得した。また2013年では111枚で382地点(交通不安226、犯罪不安101、災害不安55)の不安箇所を取得し、両年次共、交通不安の箇所数が最も多かった。2013年データに対してカーネル密度推定を適用した結果、交通不安、犯罪不安、災害不安、それぞれに不安地点密度の高い場所が異なっていた。交通不安は箇所数が最も多く、学校区全体に分布しているが、特に交通量の多い幹線道路を横断する地点で、密度の高まりが見られた。犯罪不安については、民家や人気が無い農道での不安感が高かった。災害不安については、周辺に民家が無く、災害発生時に避難する場所も無い地域での密度が高く、2012年調査と比較して不安感の高まりが見られた。また、道幅が狭く家屋が密集する地域での不安感も高く、塀や壁が崩れる恐れを指摘する声が多かった。さらに、児童の性別と保護者の不安感の関係を探るため、交通、犯罪、災害、それぞれの不安箇所について、男児のみが通学、女児のみが通学、男女が通学、の3タイプの割合を計算した結果、犯罪不安では女児のみが通学している保護者の割合が高く、災害不安では男児のみが通学している保護者の割合が高い傾向がみられた。