著者
眞保 潤一郎
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.87-104, 2004-01-31

アメリカ合衆國戰略爆撃調査團の報告書『日本戰爭經濟の崩壊』は、日本戦争経済機構を解剖する病理学である。占領軍が賠償上の目的で、「日本國民の平時の需要はだいたいにおいて1930-34年の時期と……〔復興した日本国民の〕生活水準と同じであるべきだ」とする政策に基づく、輸入計画は厳しく1950年民間貿易再開を通じ、世界市場へ復帰した時点で、經濟自立達成の見通しは暗かった。朝鮮動乱の勃発は、この情勢を一変し外貨準備高を急増せしめ、經濟自立の重要さを蔑ろにし、「もはや戦後ではない」との名言を遺し、『神武景気』と言われる好景気をもたらし、偏向した消費性向を助長し、仮想した「經濟大国」へと向かわせた。ニクソン・ショックはその過ちを認識させる最初のシグナルであった、が。