著者
金澤 由佳
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.135-147, 2018-03

『犯罪白書』には精神障害者による犯罪という項目がある。そして、「刑法」「医療」「福祉」を中心にこれまでに多くの学際的な研究が『犯罪白書』を引用し、精神障害者の犯罪率は一般刑法犯に比べて低いこと、一方で特定の罪種についてはより高い犯罪率を示すことなどを指摘してきた。精神障害者による犯罪は『犯罪白書』が刊行された当初より、継続して語られてきた重要項目の1つであるが、時代をさかのぼって『犯罪白書』をみるならば、刊行当初は「精神障害」という用語が示す定義自体もあいまいであり、一般刑法犯に占める精神障害者の比率やその罪種別の割合も示されていなかった。そこで、本研究では、『犯罪白書』における精神障害者の定義や精神障害者による犯罪率の変遷について着目し、全57冊の『犯罪白書』を概観した。『犯罪白書』を引用する場合は、本研究で明らかになった『犯罪白書』における定義や特徴を念頭におき、誤解や偏見を招かないよう留意する必要性があると思われた。
著者
小坂 智子
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.83-86, 2004-01-31

長崎の平和公園に設置されている、北村西望作《平和祈念像》は、公共空間におかれている彫刻作品のはらむ諸問題を様々に指し示している。この研究ノートではその問題を整理し、いくつかの考え方を提示することを試みた。
著者
金澤 由佳
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.135-147, 2018

『犯罪白書』には精神障害者による犯罪という項目がある。そして、「刑法」「医療」「福祉」を中心にこれまでに多くの学際的な研究が『犯罪白書』を引用し、精神障害者の犯罪率は一般刑法犯に比べて低いこと、一方で特定の罪種についてはより高い犯罪率を示すことなどを指摘してきた。精神障害者による犯罪は『犯罪白書』が刊行された当初より、継続して語られてきた重要項目の1つであるが、時代をさかのぼって『犯罪白書』をみるならば、刊行当初は「精神障害」という用語が示す定義自体もあいまいであり、一般刑法犯に占める精神障害者の比率やその罪種別の割合も示されていなかった。そこで、本研究では、『犯罪白書』における精神障害者の定義や精神障害者による犯罪率の変遷について着目し、全57冊の『犯罪白書』を概観した。『犯罪白書』を引用する場合は、本研究で明らかになった『犯罪白書』における定義や特徴を念頭におき、誤解や偏見を招かないよう留意する必要性があると思われた。In 1960, the "crime white paper" first acknowledged crime by mental disorders. Many interdisciplinary studies quoted in past "crime white papers" mainly focused on criminal law or medical care or welfare etc. Comparing mental disorder crime rates to general criminal crime, it was pointed out that the mental disorder crime rate was lower than the general criminal crime rate. However, there are mental disorder crimes which are higher than the general ones. Analyzing crimes by mental disorder vs general crime was one of the important discoveries which still continue today. This new idea to separate the mental disorder data from the general crime data had been debated and talked about after the publication of this particular crime white paper. Before 1960, the definition of mental disorders was vague, unclear. Therefore the "crime white papers" stated their observation without differentiating between mental disorder and general crime. My intention in this study is to identify the changes in the "crime white papers" from 1960 to 2016 both in definition and crime rate data. Therefore I examined all 57 "crime white papers". Trying to remain neutral, I read each crime white paper and examined its respective definition and its history of process.
著者
立平 進 Susumu TATEHIRA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.45-54, 2007-01

民俗学は、ある特定の地域を限って調査する場合が多く、所定の調査項目に従ってではあるが、主な手段として、いろいろな分野(角度)から聞き取り調査を実施することになる。その際、調査対象地域をどのように設定するのかという基本的な命題がある。調査対象地としての地域は、ただ単に地理的広がりの範囲を対象とするのではなく、民俗学的な領域について、その範囲を確定する必要があるからである。地域を認識することについて、過去に必ずしも充分に研究されてこなかった経緯がある。ほとんどの場合物理的に地理的広がりを地域として認識していたためである。ある地域に住む人々は、どのような広がりの中で生活していたのか、あるいは自らの生活範囲について、どのように認識しているのかということが問題であるのだが、これが民俗学的に明確に示された例は少ない。本稿では家と屋敷と村境について、比較的容易に境を示すことができる事例が抽出できたため、これを報告しながら境を区切るものは何かという表題に近付いていく手ががりとした。ここで取り上げたサブタイトルに記す「家札・門札・免札」は、民俗資料として、特に信仰の民具というべきものである。その信仰に触れながら、民具として機能している実態を考察した。
著者
中村 敏秀
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.113-126, 2003-01-31
被引用文献数
1

本稿では知的障害者の地域移行の前提として、知的障害者更生施設の援助実態と施設援助を規定する要因について検討の必要性を提起した。それは地域移行の先駆けとなったアメリカやスウェーデンに生起した、施設の管理抑圧的な援助が地域生活援助に持ち込まれる危険性を無視しえないからである。このため全国の知的障害者更生施設の援助に関する予備調査をし、施設援助の規定要因として援助環境、利用者の自由裁量度、援助水準、職場満足度の4つの規定要因を抽出しえた。今後、この調査結果に本調査を実施する予定である。
著者
平井 美津子 Mitsuko HIRAI
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.13-20, 2014-03

英語は、歴史上主に4回ラテン語と接触し、多くのラテン語が流入した。その中でも近代英語前期には、学術用語をはじめとして極めて多くのラテン語が英語に流入した。今回、英語の学術用語、特に医学用語の形容詞形に注目し、その語源と英語での初出年を調査し分析した。その結果、ラテン語由来の形容詞形は85%近くを占めることがわかった。一方、ゲルマン祖語に由来する古英語を語源とする形容詞形は10例で、いずれも接尾辞 -y が添加されたものであった。
著者
平井 美津子 Mitsuko HIRAI
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-9, 2013-03

ラテン語は現在、死語といわれている。しかし今も英語、特に自然科学分野の書物や文献の中で生き続けている。英語の多くは古典語、すなわち古典ギリシャ語やラテン語に由来しているといわれている。今回、まずラテン語の歴史および学術用語の構造について概説した。そして、自然科学分野の英単語に多く残っているラテン語由来の英語の不規則な複数形を取り上げ、英語への導入年代を調べた。その結果、多くの不規則な複数形は、ラテン語の主格名詞の複数由来で、16~17世紀に英語に導入されたものであることがわかった。18世紀には英語の文法が確立し、国際語として英語が拡大するのに伴い、ラテン語の影響力は衰えていった。
著者
安部 直樹 Naoki ABE
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.13-22, 2007-01

中国より渡来した茶は、僧侶、公家、武士等に広まっていき、やがて足利、織田、豊臣らの大名によって茶道として定着していくのであるが、公家の茶、町人茶、大名茶はその理念、形態等に多少の違いがある。更に織田信長、豊臣秀吉の茶と織部、遠州、石州等の茶道にも若干の相違がある。ヘウケモノとしての古田織部、綺麗さびを特徴とした小堀遠州、武士のあつまりである分相応の茶の片桐石州、この3人の茶道をとりあげ大名茶としての理念にせまってみた。
著者
小林 徹
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.67-77, 2002-01-31

1994年9月下旬に岐阜県八尾津において,杉原千畝(1941年リトアニア日本外務省職員として勤務中,ユダヤ難民に日本通過ビザを発行して避難の手助けをした人物として知られる)の業績を讃える式典が挙行された。参加者の中には日系元米兵及び救出されたユダヤ人や子孫が含まれており,その式典に著者も参加する機会を得て,以来7年間にわたり日系米人(多くは二世の世代)との交流を通じて様々な歴史的知見を得ることができた。本論は小林がまとめた日系米人年表である。第2次大戦後の日米関係の改善にあたって,二世,三世を中心とする日系米人の果たした力の源泉をこの年表からくみとっていただけたら幸いである。若干のまとめは年表の末尾に記述する。
著者
安藤 佳珠子 Kazuko ANDO
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学教育基盤センター紀要 = The Journal of Nagasaki International University Center for Fundamental Education (ISSN:24338109)
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-12, 2019-03

本稿の目的は、クリティカル・ソーシャルワークに基づくソーシャルワーク教育を実践するにあたり、講義形式の授業において、どのように展開することができるのかを提示することにある。このことにより、スクールソーシャルワークにおいて必要である環境に対する変革のアプローチを、講義形式の授業で実施する方法を提案し、その実施における成果と課題について整理する。第1章では、スクールソーシャルワーク教育におけるクリティカル・ソーシャルワークの導入の必要性について検討する。第2章では、講義形式の授業内で、クリティカル・ソーシャルワークに基づくソーシャルワーク教育の展開を、提示する。具体的には、スクール(学校)ソーシャルワーク論での実施したクリティカル・ソーシャルワークに基づくソーシャルワーク教育実践である。それに基づき、第3章では、その実施における成果と課題について整理する。
著者
箕輪 憲吾 Kengo MINOWA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.33-43, 2009

本研究の目的は、九州大学女子バレーボールリーグ戦を対象として、リーグ戦の成績に影響を与えている要因を明らかにすることであった。研究対象は、2003年度に行われた春季九州大学女子バレーボール2部リーグ戦5試合、10セットと2003年度秋季九州大学女子バレーボール1部リーグ戦7試合、27セットであり、すべて NK チームとの試合であった。本研究では、1部リーグの上位グループと下位グループおよび2部リーグに分類して分析を行った。主な結果は以下の通りである。1)リーグ戦のレベル差については、1部リーグ下位グループ(TL-LG)と2部リーグ(SL)のレベル差の方が1部リーグの上位グループ(TL-HG)と下位グループ(TL-LG)の差と比較して大きいことが明らかになった。2)リーグの成績によってサイドアウト能力とサービスキープ能力にレベル差があることが明らかになった。3)1部リーグの上位グループ(TL-HG)と下位グループ(TL-LG)の差は、攻撃力よりも守備力にあることが明らかになった。4)1部リーグの下位グループ(TL-LG)と2部リーグ(SL)の差はトランジッションよりもサーブレシーブからの攻撃の方が大きいことが明らかになった。The purpose of this study was to clarify factors that affected the results of the games in Kyushu University Women's Volleyball League. Samples were taken to observe from 10 sets of 5 games in the 2003 Spring Kyushu University Women's Volleyball Second League, and 27 sets of 7 games in the 2003 Fall Kyushu University Women's Volleyball Top League,all of which were fought against the NK University women's volleyball team. In this study, I classified them into the higher group(TL-HG)and the lower group(TL-LG)of the top league, and the second league(SL)group in analysis. Main findings were as follows:1)It was clarified that the level difference between the TL-LG teams and SL teams was larger than that between the TL-HG teams and TL-LG teams. 2)It was clarified that there were level difference in the side-out ability and the service-keep ability by the results of the league. 3)It was clarified that, between the TL-HG teams and TL-LG teams, there was more difference in defensive skill than in attack power. 4)It was clarified that, between the TL-LG teams and SL teams, there was more difference in service-reception attack than in transition attack.
著者
嶋内 麻佐子
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.19-25, 2005-01-31

大名茶の完成は遠州、そして石州は新たな大名茶を構築したとみるべきであろう。幕藩体制の熟覧期に、石州の茶は柳営茶湯と称されるに至った。織部、遠州の茶湯とどう違うのか。石州の生い立ち、茶湯の経歴、更には侘び茶を基本とする千利休と石州の比較、大名茶として時代の要請を背景としながら、独自の茶風をつくり上げていく石州の茶への一考察である。
著者
立平 進
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.33-42, 2004-01-31

今から二千数百年前、中国大陸から直接、あるいは朝鮮半島を経由して日本列島にかなりの数の人々が渡来して来た。弥生時代が始まる頃のことである。日本文化の起源をこの時期に求める研究者は多く、それ以前の縄文文化とどのように日本文化をつくりあげてきたのか、根強い論争が続いでいる。いろいろな分野の研究者が諸説を展開して、夢とロマンに充ち溢れた研究領域ともいえる。筆者も、民俗学・民具学の研究を志す者として、歴史文化学の学際的研究から親近感をもって眺めてきた。近年、東シナ海の海流を知ることにより、「文化を運ぶ海流」として、九州が東アジアでどのような立場にあったのか、を考えている。本稿では、いくつかの実例を示しながら、文化の伝播について考えてみたのであるが、主体は徐福の東渡について取り上げた。日本国内には、徐福にまつわる伝説の地が30箇所以上もあるといわれ、佐賀市金立の徐福長寿館では、日本各地の徐福伝説の地として、21箇所を表示している。徐福の東渡については、中国の歴史書『史記』に記されている。中国思想史研究の福永光司によると徐福の東渡は歴史的な事実であると断言しているのである。さらに「徐福の出航は、文献実証学の立場から高い信憑性を持つ史書の記述によって検討考察するかぎり、その時期はわが国における弥生式文化の開始時期とほぼ重なり合う前三世紀の頃-正確には秦の始皇帝の即位二十八年目(B.C.219)後の数年間-であり、」と記す。これを東シナ海の海流の動きから見ると、どのような解釈ができるのか、ということを試みたものである。その結果、考古学的な成果と考え合わせて、ずれが生じていることも確認できるのであるが、伝説に歴史と考古学的な成果とを取り混ぜての論考で、学際的な試みとして、理解を得たいとするものである。
著者
ヴィラーグ ヴィクトル
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
no.20, pp.65-75, 2020-03

近年、ソーシャルワークにおける国際的な諸基準は性の多様性について明確な立場を示しているが、日本の専門職界においてLGBTに関する取り組みはまだ少ない。本稿は、日本を含めて性的マイノリティの実態の把握と関連基準の比較を目的とする。この目的を達成するために、本稿は4部構成となっている。 第一部は、性の多様性をソーシャルワークにおいてどのように理解すれば良いかについて論じ、クライエントの性をアセスメントするために、身体・心理・社会・文化的・スピリチュアルな枠組みを採用している。第二部は、世界中と日本のLGBTについて入手可能な国内外の量的データをまとめている。第三部は、性の多様性に関するソーシャルワークの専門的な基準に係る国内外の文書を比較している。第四部は、理論的モデルのレビューに基づき、LGBTに特化して、反差別的及び文化的力量アプローチに基盤をおいたソーシャルワークの原則を整理している。
著者
嶋内 麻佐子
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.79-85, 2002-01-31

武家茶には,その時代の要請が強く反映されている。古田織部によって武家相応の茶の湯が出来上がってゆくが,まだ完成の域には達していない。その弟子である小堀遠州は,大名達の要請を意識しながら,優雅さの中に佗びを表現するという独自の武家茶を完成した。その遠州の茶について考察してみた。
著者
黒山 竜太 益田 仁 柳詰 慎一 脇野 幸太郎 Ryuta KUROYAMA Jin MASUDA Shinichi YANAZUME Kotaro WAKINO
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.89-95, 2013

本研究は、救護施設における現状を踏まえた上で、利用者と施設職員にどのような心理的ニーズがあるのかを探索することを目的としたものである。救護施設の現状としては、社会情勢が揺れ動く中生活保護法のうえに成り立つ救護施設において、利用者の自立支援を促すためには様々な阻害要因が横たわっていることが窺えた。施設利用者については、その背景的要因を踏まえた上での心理的支援、とりわけ個別支援計画の作成や地域生活移行における心理的支援の必要性が示唆された。施設職員については、福祉施設全般としてメンタルヘルスへの啓発や職務に対する客観的理解および裁量度、利用者についての理解、チームでの相互の意思確認などの重要性が示唆された一方、救護施設自体の特性を考慮した上での支援については検討の余地が残されていることも明らかとなり、今後の課題が示された。This report considered the present state of public assistance institutions and the psychological needs of the people in such facilities. Now, public assistance institutions exist under the Livelihood Protection Law. Therefore, it was understood that people's self-reliance is checked by various factors. For people in facilities, it was suggested that the psychological supports based on a background factor is necessary. Especially, it was suggested that the psychological supports on designing individual support programs and the relocation from residential institutions to community living are necessary. Otherwise, for workers in facilities, it was suggested that mental-health education and objective understanding for their own jobs and the degree of discretion of their jobs and understanding about people in facilities and mutual intentions check in a team are important in all over social welfare institutions. On the other hand, it was indicated that the discussion about the support of public assistance in stitutions is insufficient. Future research topics are shown.
著者
森永 紀
出版者
長崎国際大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

生薬成分の配糖体に対するモノクローナル抗体(MAb)とイースタンブロット法(低分子化合物である配糖体の免疫染色法)を利用して、漢方薬の網羅的解析法の開発を行った。その結果、イースタンブロット法を基盤として、dot blot法と化学発光法を組み合わせることで、甘草のグリチルリチン(GC)と黄〓のバイカリン(BI)を迅速、簡便、高感度且つ特異的に検出できることに成功した。本法を漢方薬中のGCとBIの分析に応用したところ、HPLC法やELISA法と同様に定量分析することが可能であり、漢方薬中の有効成分の網羅的定量分析が可能な有用な手法であることを確認した。
著者
俵 寛司 Kanji TAWARA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.23-38, 2017-03

本稿は、2004年11月から2005年2月まで実施された長崎県対馬市「まちなみ景観建造物等調査事業」、すなわち旧対馬藩城下町に所在する歴史的建造物を対象とする市民協働の調査と、その対象の一つである「半井桃水生家跡」の保存問題について分析することを通じて、現在の日韓国境、対馬における景観・文化資源の在り方について考察する。厳原町市街地に分布する近世~近現代の歴史的建造物について分布調査および個別遺構の調査を行った結果、全体で436地点の遺跡分布が明らかとなり、11件の遺跡について個別調査を実施した。その一つ、「半井桃水生家跡」は、明治・大正時代に活躍した対馬出身の文学者、半井桃水(1860-1926)の生家跡に推定されていたが、2005年に解体されたことは、現代のまちなみ景観と遺跡保存の問題を示す象徴的な出来事である。本稿で論じた景観まちづくりと遺跡保存の密接な連携の必要性は、国際的にもますます大きくなっており、対馬はその重要な役割を果たすことが期待される。This paper examines current issues on the close relationship between townscapes and conservation of the historic sites in Tsushima Island on the border between Korea and Japan. This will be based on the Research Project on the Buildings of Townscape in Tsushima City, Nagasaki Prefecture with civic collaboration from November 2004 to February 2005. This also analyses conservation problems on the historic site of Tosui NAKARAI's birthplace [半井桃水生家跡]. This Research Project was carried out by both the general survey and intensive research, thus, they have revealed distribution of the 436 historic sites and 11 detailed features around Izuhara-town as the central area of Tsushima now and the former capital of the Tsushima clan, during the Edo period [1603-1868]. One of these sites has been believed as the birthplace of Tosui NAKARAI [半井桃水 1860-1926], a famous novelist during the Meiji and Taisho eras born in Tsushima. Athis site was demolished that building in 2005 and it was a symbolic event to indicate the contemporary issues. As necessity of the close relationship between the townscapes and conservation of the historic sites has increased in the world context as well, Tsushima will be expected to play such an important role today.
著者
内田 智子 Tomoko UCHIDA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-11, 2017-03

大槻文彦(1897)『広日本文典』『広日本文典別記』「文字篇」に見られる用語、概念(「母韻」「発声」「単純音」「成熟音」)について考察した。大槻の「母韻」の語は、現在の「母音」に該当し、悉曇学に由来することが明らかとなった。大槻の「発声」は、現代の「子音」に対応する概念である。一方で、幕末の音義派は、「父音」「母音」「子音」の3つの用語を使用し、明治時代には、音義派に由来する「子音」と、洋学に由来する「子音」の2種が使用されていた。大槻の「単純音」の語は、「母韻」と同じ意味で使われており、「ア行音」を意味している。大槻がいわゆる母音に2種の語を当てた理由は、悉曇学にある。「成熟音」の概念は、伝統的音韻学の「仮名反切」に原型があり、音義派の手法を用い、それをオランダ語に適用した「蘭学」の影響の下に生まれた。伝統的音韻学の手法を蘭学に適用した結果が、大槻の記述に流れ込んでいる。This paper examines the features of the terms and the concepts of the "Boin" ,the "Hassei" ,the "Tanjun-on" and the "Seijuku-on" referred to in "Konihonbunten" and the "Konihonbunten Bekki" of OTSUKI Fumihiko published in 1897. It has become obvious that the "Boin" corresponds to today's "vowel" and derived from the "Shittan-gaku", whereas the "Hassei" corresponds to today's "consonant". On the other hand, the Edo period, the "Ongi" school used three words of the "Huon", "Boin" and "Shion". In the next Meiji period, two types of the "Shion(子音)", derived from the "Ongi" school and the Western studies, were used. The "Tanjun-on" is equivalent with the "Boin(母韻)" and both indicate the "Agyo-on". The course for this phenomena is to be able to trace back to the "Shittan-gaku". As for the "Seijuku-on", its original concept is to be found in the "Kanahansetsu" of the traditional phonology. It was created as a result of the application of the "Kanahansetsu" for Dutch under influence of the Western studies with the methods of the "Ongi" school. This application eventually led to OTSUKI's description in "Konihonbunten" and "Konihonbunten Bekki".
著者
孫 勝強
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.123-133, 2004-01-31

1987年にはじめて中国の故宮、万里の長城などがユネスコの「世界遺産リスト」に登録されて「世界遺産」となってから、現時点で(2003年10月現在)文化遺産と自然遺産は全部で29力所となった。筆者は10年前から毎年これらの世界遺産を訪ね歩いてきた。盧山、武当山、承徳、平遥古城及び今年新しく加わった雲南省の三江併流など三ケ所を除いてすべて訪ねた。中には敦煌の旅は四、五回を超えたが、その中で、去年の夏休みに始めて訪ねたチベット・ラサの旅は一年経った今も鮮明に脳裏に焼きつけられて忘れることができない体験であった。チベット語で「神の土地」、日照時間が長いことから「太陽の町」とも呼ばれているラサは、私はいつか行こうと心に決めていたが、そのいつかがようやく実現できたのは2002年の8月だった。それまでに憧れのラサへ行きたいと思ったことが何回かあったが、高山病のことを考えて見合わせた。トレーニングのつもりで、三年前に標高3, 200メートルのシャングリラと呼ばれている中甸を訪問した。二、三日滞在して白水台や松賛林寺などあちこち走り回ったが、何ともなかったので一応自信がついた。続いて二年前の夏に家族と一緒に世界遺産の麗江の玉龍雪山に登った。ロープウエィーのゴンドラで、標高4, 500メートルの地点まで行って、それから一時間半ぐらいかけて4, 900メートルの展望台に登りつめて30分ぐらい写真とビデオを撮ったりした後、下山した。今度も大丈夫だった。この体験でチベットへの旅の決心がついた。断っておくが、この文章は論文でも調査報告でもなく、ただ、私の体験を伝えることが出来れば幸いである。旅行中に日記をつけたので、旅行日記の形で書くことにした。