著者
眞嶋 亜有
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

平成18年度の研究実施状況としては、次の通りである。前年度において論文発表し高い評価を得た、近代日本における身体の「西洋化」研究の一つである"水虫"を巡る近現代日本社会・文化史的研究に、英米との比較史を加えたものを精力的に調査研究発表した。その成果を所属機関である国際日本文化研究センター主催の国際シンポジウム(香港)に参加発表した際の論文として提出した「20世紀初頭における米国有閑階級とathlete's footの成立」が、同センター論文集に受理され現在編集作業中である。同時に、本研究課題の主軸でもある、其の人種的自己認識を巡る社会・文化史研究についても発表を続けており、近代日本エリート層における身体の「西洋化」の象徴であった洋装と髭に関する調査研究を、同センター主催国際シンポジウム(於・エジプト)にて口頭発表し、その論文として「明治期洋行エリートの身体文化と人種的自己認識の形成-洋装と髭を中心に-」を提出、上記論文集に受理され現在編集作業中である。同テーマに含まれる身体文化として、日本のテレビCM史における「髪の色」を巡る自己認識の現代史的側面を「"黒髪の金髪好き"のゆくえ」と題し発表した。加えて、本テーマの基盤となっている身体の「西洋化」と食事、殊に肉食との歴史的関連に関して、「牛肉心酔という身体文化」を発表し、近々に「"牛肉=精力"幻想の成立-近代日本における肉食志向・菜食志向をめぐって-」も関連学会誌に投稿予定である。上記からも明らかなように、本研究課題に関しては肉食、人種、水虫という斬新な切り口からこれまでの「西洋化」研究に見逃されていた盲点並びに新境地を着実に開拓している。そして平成18年度の海外調査としてハーバード大学にて調査研究が出来たお陰で、本年は単著出版として本研究を世に問う時期が漸く訪れた。このような機会と環境を与えられた幸運に心から感謝すると共に精力的な成果発表に精進する次第である。