著者
飯泉 俊雄 服部 晃 真田 雅好 武藤 正樹
出版者
国際組織細胞学会
雑誌
Archivum histologicum japonicum (ISSN:00040681)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.305-320, 1977
被引用文献数
14

マウス脾臓を灌流固定, 凍結割断ののち, 巨核球について走査電子顕微鏡による観察を行なった. 多くの巨核球は脾索内に存在し, 脾洞と細静脈の壁に近接していた. また稀には洞内と細静脈内にも認められた. 巨核球は細網細胞によって囲まれ, ときには両者の胞体の鋸歯状結合もみられた. 巨核球の概形は, 未熟なものは円形, 成熟するに従って不整形となり, 細胞表面には大きな突起がみられた. 巨核球の細胞表面には小孔と小突起が認められた. 小突起には2種類が識別され, 一つは血小板放出に関与すると考えられる球状の突起 (第一型) で, 他は絨毛状の細長い突起 (第二型) であるが, 後者の意義は明らかにされなかった. 細胞表面の小孔は細胞内の血小板分離膜系の入口であることが明らかにされた. 細胞の割断面すなわち細胞内には, 血小板分離膜系が小溝として認められ, その発達が形質膜の細胞内への陥凹によって始まることが確認された. 発達した血小板分離膜系によって囲まれた血小板小野は金米糖様の形をしていた.<br>血小板放出様式については四つの機序が観察された. 1) 血小板分離膜系が巨核球の中間層に発達し, 個々の血小板小野を形成したのち, この分離膜系がエクトプラズムにまで及び, ついには細胞表面を細区分する. この部分がびんからコルク栓をぬくようにして細胞から離れたのち, このエクトプラズムの欠損部より内部の血小板が集合してあるいはリボン状に連なって放出される. このさい脾索で放出された血小板は洞壁の内皮細胞内の小窓を通って洞内に流出する. 2) 巨核球の大きな細胞質偽足が洞内に突出し, 後になってこれが個々の血小板に分離する. 3) 巨核球が直接血流に入り, 肺などで血小板を放出する. 4) 巨核球の細胞小突起 (第一型) が洞内に突出, これが血小板として離れる. この場合は小器官のない血小板が生ずると考えられた.