- 著者
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真道 公雄
- 出版者
- 公益社団法人 高分子学会
- 雑誌
- 高分子論文集 (ISSN:03862186)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.2, pp.127-132, 1981
誘電体に一定の直流電圧を印加しながら加熱または冷却すると電流が流れる. これを熱刺激分極電流 (TSPC) と名付け, 誘電体の分子運動に関する情報を与える. 十分に熱処理した無配向のポリエチレンテレフタラートフィルムに直流の高電圧を印加しながら加熱すると, 初めはプラス方向の電流が流れるが, 適度な高温で電流はマイナス方向に流れ, 更に高温でプラス方向に流れる. この試料に高温から同じ電圧を印加したまま冷やしてゆくと, プラス方向の電流が流れるが, 低温から再び温めると電流はマイナス方向に流れる. この電流は高温での直流伝導電流の値が優勢になると隠ぺいされる. 熱刺激分極電流の方向が温度によって変化するのは, ポリマーの極々な分子運動の緩和による変位分極が温度の逆数に比例し, 冷却時にはその分極が増加するが昇温時には減少することで説明できる.