著者
佐々木 賢太郎 木村 剛 大泉 真一 矢代 郷
出版者
日本転倒予防学会
雑誌
日本転倒予防学会誌 (ISSN:21885702)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.27-33, 2018-03-10 (Released:2018-06-29)
参考文献数
20

【目的】本研究は転倒要因として最も多い「つまずき」に焦点を当て,つまずきやすさの指標である歩行中のminimum toe clearance (MTC) と膝関節固有感覚の関連性を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は地域在住高齢者16人(男性9人,女性7人,71.6±6.3歳)であった。計測項目は膝関節運動覚(JMS)と歩行遊脚期におけるMTCであった。JMSは独自に開発した装置を用い,開始位置から膝関節が動かされたと感知するまでの移動距離をJMSの閾値とした。運動方向は伸展と屈曲の2条件とし,各々2回の計測を行った。MTCは3次元動作解析装置を用い,通常歩行(ST)と計算課題を課した二重課題歩行(DT)2種類(暗算課題・ディスプレイに映写された計算課題)の合計3条件下で計測を行った。伸展・屈曲JMSの平均値と歩行3条件におけるMTCの平均値および標準偏差の関連性について検討した。【結果】歩行3条件におけるMTCの平均値とJMS2条件の閾値に関連性は認められなかったが,STにおけるMTCの標準偏差は伸展・屈曲双方のJMS閾値と有意な関連性が認められた。一方,DTでは,唯一,暗算課題のMTCの標準偏差は伸展JMSと有意な相関関係が認められた。【結論】地域在住高齢者を対象とした本結果から,膝関節の固有感覚能の低下はつまずきの一要因である可能性が示唆された。