著者
中迫 勝 矢島 信子
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.289-298, 1970-08-30 (Released:2009-02-17)
参考文献数
10
被引用文献数
2

交通事故発生要因の一つである運転行動とその背景の生活条件である運転労働時間との関係を, 質問紙法を用いて, 調査した。その調査対象は交通事故体験者180名, ハイタク運転者44名, トラック運輪運転者83名であった。調査結果は次の通りである。1) 一日当たりの運転労働時間すなわち0∼3.0hr/day, 3.1∼8.0hr/day, 8.1∼hr/dayには, 運転操作 (ハンドル, ブレーキ, アクセル, クラッチ, チェンジ・レバー) の差は認められないが0∼3.0hr/dayは他の条件に比較し, 足による運転操作に「欠点」のある傾向を示した。2) 長時間運転労働者には「運転疲労」と「交通事故発生回数」との間に高い相関を認め, 一方, 短時間運転者には, 「眠気」と「交通事故発生回数」との間に相関のある傾向を認めた。3) しかし, 8∼10, 10∼12時では疲労感は比較的少ないが (運転行為の影響が大きく) 事故が多い。2-4, 4-6時の深夜早朝時には疲労感は大きいが (交通量が少ないため) 事故は比較的少ない。4) 12∼14, 14∼16時の時間帯では, 疲労の訴え, 事故回数ともに, 運転労働時間と関係なく大きい。5) 実数の事故回数より運転単位時間当たりの事故回数を指標とする方が, 運転労働時間と運転行動との関連特性を明確にしている。