著者
小林 茂樹 矢島 経雄
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.69-79, 1977-03-10

近年国内における牛肉は供給不足の傾向にある。このため乳廃牛の食肉としての利用性を高めることが、需給関係からも酪農家の立場からも重要である。ところが乳廃牛を積極的に肥育する方法については、報告が少ない^<1)>。そこで筆者は、i)乳廃牛の年令と肥育効率の関係、ii)廃用処分に際しての妊娠による増体の活用、iii)飼料の切替による肉質の変化、iv)廃用時肥育の経済性の4点につき、東京大学付属農場の飼養牛を用いて試験・検討した。その結果、i)については、若令牛に比べ高令牛(おおむね生後8年以上)では増体量が小さく、肉質の改善も進行しがたく、これはとりわけ生後10年以上の乳牛で顕著と考えられた。ii)については、受胎の4〜5ヶ月後に廃用処分することにより、増体量が明らかに大きくなり、その肉質も低下することはないと考えられた。しかし、本法は妊娠牛または受胎可能牛を廃用とするため、実用には抵抗が感じられた。iii)については給与飼料を粗飼料主体から濃厚飼料主体に切替えて以後の肥育期間を2.5ヶ月および5ヶ月としたときの肉質の変化を対比したところ、後者の方が改善の度合が大きかったが、その枝肉格付は「並」に留まった。iv)については、まず乳廃牛の廃用時期について検討したところ、一般的技術水準と価格水準の下では泌乳量が9〜10kg/日に下落した時点で廃用とするのが有利であるが、厳密には飼料の利用効率、飼料の単価および肉の販売単価が相互に関連し、1日当り増体量の換価が1日当り飼育費(生産費)を越えるときのみ肥育の継続が有利であり、1日平均収益を最大化するには1日当り増体量の換価が減少し始める時点で廃用とすべきことが、判明した。