著者
柏村 文郎 山本 正信
出版者
日本家畜管理研究会(現 日本家畜管理学会)
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.73-83, 1985-10-15 (Released:2017-10-03)

牛にはどのような鳴き方があるかを調べ, 分類することができれば, 牛の健康状態や欲求を知るなど管理面で有効に利用できる可能性があると考え, 牛の鳴声の分類を試みた。さらに, 比較的安価な音声分析の方法として, 1/3バンドパスフィルタユットを接続した騒音計による周波数分析とマイコンによるサウンドスペクトログラフの利用について検討した。年齢により5グループに分けたホルスタイン種雌牛25頭から合計489の鳴声を録音した。鳴声の録音は, FMワイヤレスマイクを牛の頭絡に装着し, ラジオカセットレコーダを用いて20分間行なった。成牛および育成牛は1頭のみ群がら隔離した状態で, 哺乳子牛はカーフハッチにおいて朝の哺乳直前に録音を行なった。鳴声の分類について, 成牛と育成牛の鳴声はMM, MOO, MOHの3つの型に, 哺乳子牛はMMとMOの2っの型に分類した。これは, ひと鳴きが単調ではなく, 強さや周波数が連続的に変化することに基づいた分類である。MMはうなり声に近く, 口はほとんど開けず, 声は弱い(頭絡上で82±4.6dB)。長さは1.5±0.4秒で, 基本周波数は80〜100Hzと考えられた。MOOはMMと違い, 後半口が開いており, 強さは94±6.7dBでMMとMOHの中間であった。MOHは群から隔離された今回の実験状況下の牛では一番多く観察された鳴声で(78%), 遠くの群にとどくよう声は強く(102±4.9dB), 長さも長いものが多かった(1.7±0.4秒)。この型は, 後半に強い声を出すため横隔膜を収縮させる動作を伴う。M・O・Hと分割して考えると各音節の強さ, 長さ, 高さなどが多種多様であったが, さらに細かい分類はしなかった。哺乳子牛のMMとMOの強さはそれぞれ77±3.5,98±6.8dB, 長さは1.1±0.5,1.4±0.3秒であった。MMの基本周波数は100〜160Hzで, 成牛や育成牛とはかなり声の質は異なっていた。MOHやMOなど周波数が時間とともに連続的に変化する鳴声は, 騒音計による周波数分析のみでは細かい特徴をとらえ難かった。その点, マイコンによるサウンドスペクトログラフを使用すると, 鳴声の細かい特徴をとらえるのに有効なことが分った。
著者
石井 幹 並木 昌子 渡辺 文子 久保田 義正 安部 直重 高崎 宏寿 大宮 正博
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.73-80, 1983-03-01

1.1977年における調査乾草補給という条件下の, 乳用種去勢牛48頭の行動を夏の5日間, 屈斜路酪農研修施設の4haの放牧地と0.2haの通路で, 日中14時間観察して次のような結果をえた。1)平均行動時間は採食形が262分(31.2%), 反芻形を含む休息形が486分(57.8%), 移動形が14分(1.7%), そして混合形が78分(9.3%)であった。2)暑い日における採食時間は215分, 涼しい日は294分であったから, 暑い日は涼しい日より採食時間が79分も少なかった。移動時間は15分と13分でほとんど変らなかったが, 休息形は暑い日が505分, 涼しい日が473分で32分の差があった。混合形は105分と60分で, 暑い日が45分も多かった。3)平均休息率は59.8%であったが, 暑い日が63.9%, 涼しい日が57.0%であった。横臥率は平均16.7%で, 暑い日が13.9%, 涼しい日が18.5%であった。4)採食型は2回型と3回型に分れたが, 平均気温との関係は明らかでなかった。5)牛群は日の出後に食草することが多かった。6)採食時間のうち乾草採食時間が57.3%, 食草時間が42.7%であった。暑い日と涼しい日の間にはあまり差がなかった。7)平均採食回数は6.2回で, 採食1回当りの平均時間は44分であった。暑い日は7.0回採食して, 1回当り採食時間は32分であったが, 涼しい日は5.7回, 53分であった。2.1979年における調査酪農研修施設の3.0haの放牧地と通路において, 乳用種去勢牛15頭の行動を夏の4日間, 午前4時から14時間(ただし, 霧雨の1日だけは午前9時から9時間)観察した。平均気温は18.1〜21.5℃にあったので, いづれも涼しい日に該当した。調査結果はおよそ次のとおりであった。1)平均行動時間は食草形が461分(54.9%), 反芻形が243分(28.9%), 休息形が107分(12.7%), そしてその他の行動形が29分(3.5%)であった。2)反芻形と休息形における横臥姿勢の割り合いは, それぞれ75.3%, 72.0%で, 全体として横臥姿勢が多かった(74.3%)。しかし霧雨の日には反芻形を含む休息形105分のうち, 起立姿勢が63.8%を占めた。3)すべて1日3回の食草型であった。4)早朝の食草行動は, すべて日の出前から行われた。3.1977年と1979年における調査結果の比較両年における観察結果から, 次のことが明らかになった。1)良質乾草を十分に補給した場合の採食時間は, 通常の夏季放牧の約57%であった。2)乾草補給下の放牧では, 主要採食形が2回型と3回型に分れたが, 通常の放牧ではすべて3回型であった。3)通常の放牧では牛群は日の出前から食草を始めたが, 乾草補給の放牧では日の出よりかなり遅れる傾向があった。
著者
柏村 文郎 山本 正信
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.73-83, 1985-10-15
被引用文献数
1

牛にはどのような鳴き方があるかを調べ, 分類することができれば, 牛の健康状態や欲求を知るなど管理面で有効に利用できる可能性があると考え, 牛の鳴声の分類を試みた。さらに, 比較的安価な音声分析の方法として, 1/3バンドパスフィルタユットを接続した騒音計による周波数分析とマイコンによるサウンドスペクトログラフの利用について検討した。年齢により5グループに分けたホルスタイン種雌牛25頭から合計489の鳴声を録音した。鳴声の録音は, FMワイヤレスマイクを牛の頭絡に装着し, ラジオカセットレコーダを用いて20分間行なった。成牛および育成牛は1頭のみ群がら隔離した状態で, 哺乳子牛はカーフハッチにおいて朝の哺乳直前に録音を行なった。鳴声の分類について, 成牛と育成牛の鳴声はMM, MOO, MOHの3つの型に, 哺乳子牛はMMとMOの2っの型に分類した。これは, ひと鳴きが単調ではなく, 強さや周波数が連続的に変化することに基づいた分類である。MMはうなり声に近く, 口はほとんど開けず, 声は弱い(頭絡上で82±4.6dB)。長さは1.5±0.4秒で, 基本周波数は80〜100Hzと考えられた。MOOはMMと違い, 後半口が開いており, 強さは94±6.7dBでMMとMOHの中間であった。MOHは群から隔離された今回の実験状況下の牛では一番多く観察された鳴声で(78%), 遠くの群にとどくよう声は強く(102±4.9dB), 長さも長いものが多かった(1.7±0.4秒)。この型は, 後半に強い声を出すため横隔膜を収縮させる動作を伴う。M・O・Hと分割して考えると各音節の強さ, 長さ, 高さなどが多種多様であったが, さらに細かい分類はしなかった。哺乳子牛のMMとMOの強さはそれぞれ77±3.5,98±6.8dB, 長さは1.1±0.5,1.4±0.3秒であった。MMの基本周波数は100〜160Hzで, 成牛や育成牛とはかなり声の質は異なっていた。MOHやMOなど周波数が時間とともに連続的に変化する鳴声は, 騒音計による周波数分析のみでは細かい特徴をとらえ難かった。その点, マイコンによるサウンドスペクトログラフを使用すると, 鳴声の細かい特徴をとらえるのに有効なことが分った。
著者
岡本 全弘 曾根 章夫
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.47-53, 1989-11-06

冬季間の気温、気動、降雨、降雪および直射日光などの気象環境が子牛からの放熱に及ぼす相対的な影響を知るための一つの手段として、子牛の熱的模型を屋外に設置して検討した。熱的模型は筒型のステンレススチール容器の表面に子牛の鞣し毛皮を張り、内部には39℃に温度調節したエチレングリコール液を満たしたもので、両側面の毛皮の下に熱流素子を添付して放熱量を測定した。その結果、直射日光は熱的模型からの放熱量を著し低下させた。風速が熱的模型の熱伝導率に及ぼす影響を検討したところ、1次回帰式が適合した。また、熱模型からの放熱量を気温と風速から推定する重回帰式を導いた。この式の決定係数は0.756であった。降雨や降雪は熱伝導率を上昇させたが、降雨は降雪より影響が大きかった。粉雪は毛先に付くだけで、毛の根元や皮膚面を濡らすことなく、熱伝導率にはほとんど影響しなかった。家畜の管理、25(2) : 47-53.1989.1989年6月19日受理
著者
柴田 正貴 向居 彰夫 武田 功 荒 智 相井 孝充
出版者
日本家畜管理研究会(現 日本家畜管理学会)
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.48-57, 1982-08-28 (Released:2017-10-03)
被引用文献数
1

夏期の高温が乳量および乳成分率に及ぼす影響と牛舎冷房の効果を明らかにするために, 延べ20頭の泌乳牛を用いて1974年から3年間にわたり3回の試験を行った。その結果, 次のような知見を得た。1)日中の最高気温が30℃を越える7月後半から8月後半におけて, 放飼群(N群)の体温は39.5℃を, また呼吸数は85回/分を越えた。しかし, 冷房群(A群)では常に体温は38.6℃程度, 呼吸数は40回/分前後であり, 牛舎冷房による効果が認められた。2)体重にあたり乾物摂取量は, 試験IではN群の方が多く, 試験IIでは両群間に著差が認められなかった。N群の摂取量は運動場における測定であるためやや過大に評価される傾向にあったものの, 飼料摂取量に明らかな冷房効果が認められなかったことは, 舎飼いによる長時間の係留・拘束の影響も無視できないものと思われた。3)N群の乳量減少率は, 試験I, IIにおいて7月後半には20%を越え, 9月に至っても回復を示さなかった。6月後半から9月前半の間における減少率では年次間に差が認められたものの, 通常の夏であれば17〜20%を示すことが明らかにされ, また, この時期に泌乳最盛期をむかえるような高乳量のものでは更に大幅な減少を示すことが推察された。4)乳脂率などの乳成分率も6月後半から8月前半にかけて低い値を示す傾向にあり, 特にSNF率では「乳等省令」で定められた規格を下回る値を示しており, 乳成分生産の面でも夏期の高温が悪影響を及ぼしていることが示唆された。5)牛舎冷房によって日中の牛舎内温度を24℃以下に保った場合は, 夏期の高温に起因する乳量減少を防止しうることが明らかになった。
著者
吉川 昭雄
出版者
日本家畜管理研究会(現 日本家畜管理学会)
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.106-113, 1981

頭絡は, 従来, 牛・馬の頭部保定具として, 誘導・調教・保定などの諸作業に広くもちいられてきたが, 今日ではその利用が衰退しつつある。本報告は, 各種牛頭絡について, 構成・作製技法などを示したうえで, 作製上の難易性や様式の特徴, あるいは結びの技法, 用途などについて検討し, 類型化を試みたものである。これらのことから, 各種牛頭絡それぞれの特徴と位置づけなどをあきらかにし, 今後の研究・改良に供するものである。
著者
早坂 貴代史 宮谷内 留行 宮本 進 荒井 輝男 鷹取 雅仁 田中 慧 佐々木 久仁雄 三浦 祐輔
出版者
日本家畜管理研究会(現 日本家畜管理学会)
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.65-72, 1990-03-16 (Released:2017-10-03)
被引用文献数
1

舎内気温の違いによる採食・反芻行動の変化を検討するために、夏と冬の各5日間、北海道東部の生産的実験牧場において泌乳前期の牛6頭の行動を肉眼観察した。乾物あたり可消化養分総量を73〜74%、粗蛋白質を14〜16%、粗飼料率を55%に調整した混合飼料をおよそ1日4〜5回にわけて個別給餌し、以下の結果を得た。 1)舎内気温と同相対湿度は、夏が25.0℃、83%、冬は6.3℃、75%であった。 2)乾物摂取量は、夏が22.5kg、冬が24.8kgであった。 3)日採食時間は夏が262分、冬が343分であり、夏は給餌刺激にもとづく採食時間が日採食時間の79%を占めたのに対し、冬は53%であった。 4)日反芻時間は夏が476分、冬が485分であった。以上から、夏の採食時間の減少ならびに給餌したときの集中的な採食行動を高温環境によるものと仮定し、高温時における代謝産物の生成の変化、体熱産生量の抑制反応、および飼槽内飼料の経時的な劣化にその違いの根拠を求めた。 家畜の管理、25(3) : 65-72.1990.1990年1月12日受理
著者
伊藤 敏男 隅田 真代 山本 禎紀
出版者
日本家畜管理研究会(現 日本家畜管理学会)
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.73-80, 1990-03-16 (Released:2017-10-03)

メン羊の行動変化に伴う熱産生量(HP)の変動を明らかにするために、4頭の去勢羊を用いて、起立(S)、横臥(L)、起立反芻(SR)および横臥反芻(LR)に対応するHPを、ヘイキューブ、生草および配合飼料を給与したチャンバー内ストール飼育条件下で求めた。同時に、心拍数(HR)の測定を行い、HPとHRと行動の相互関係について考慮し、以下の結果を得た。1)メン羊の行動変化に伴いHPとHRは大きく増加し、HPのレベルは、L&lglt;S&lglt;LR&lglt;SRの順となり、HRもほぼ同様の傾向であった。2)反芻に伴うHPの増加量は、横臥および起立時の場合とも、3kJ/kg^<0.75>・h前後であった。起立時と横臥時のHPの差は、非反芻時1.7kJ、反芻時1.3kJ/kg^<0.75&lg;・hであり、この値は、採食前あるいは後においても、給与飼料を変えた場合でもほぼ同じであった。3)HPとHRの相関図に行動を加味して検討すると、例えば反芻行動時においては、HRの増加の割にHPの増加が大きく、反芻時と非反芻時ではHRとHPの変化割合が異なる可能性を示した。 家畜の管理、25(3) : 73-80.1990.1990年1月9日受理
著者
小林 茂樹 矢島 経雄
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.69-79, 1977-03-10

近年国内における牛肉は供給不足の傾向にある。このため乳廃牛の食肉としての利用性を高めることが、需給関係からも酪農家の立場からも重要である。ところが乳廃牛を積極的に肥育する方法については、報告が少ない^<1)>。そこで筆者は、i)乳廃牛の年令と肥育効率の関係、ii)廃用処分に際しての妊娠による増体の活用、iii)飼料の切替による肉質の変化、iv)廃用時肥育の経済性の4点につき、東京大学付属農場の飼養牛を用いて試験・検討した。その結果、i)については、若令牛に比べ高令牛(おおむね生後8年以上)では増体量が小さく、肉質の改善も進行しがたく、これはとりわけ生後10年以上の乳牛で顕著と考えられた。ii)については、受胎の4〜5ヶ月後に廃用処分することにより、増体量が明らかに大きくなり、その肉質も低下することはないと考えられた。しかし、本法は妊娠牛または受胎可能牛を廃用とするため、実用には抵抗が感じられた。iii)については給与飼料を粗飼料主体から濃厚飼料主体に切替えて以後の肥育期間を2.5ヶ月および5ヶ月としたときの肉質の変化を対比したところ、後者の方が改善の度合が大きかったが、その枝肉格付は「並」に留まった。iv)については、まず乳廃牛の廃用時期について検討したところ、一般的技術水準と価格水準の下では泌乳量が9〜10kg/日に下落した時点で廃用とするのが有利であるが、厳密には飼料の利用効率、飼料の単価および肉の販売単価が相互に関連し、1日当り増体量の換価が1日当り飼育費(生産費)を越えるときのみ肥育の継続が有利であり、1日平均収益を最大化するには1日当り増体量の換価が減少し始める時点で廃用とすべきことが、判明した。
著者
野見山 敬一 増満 州市郎 竹原 誠 深江 義忠
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.37-42, 1981-10-01
被引用文献数
4

福岡県下1184農家を対照に防暑法の実態を調査した。調査はアンケート用紙を配布回収した。回収率は58.0%(686農家)で次の結果を得た。1)農家の平均飼養頭数は26.9頭, 畜舎面積は平均255m^2(1頭当たり9.5m^2)であった。2)農家が実施している防暑対策は扇風機55.0%が最も多く, 夜間運動又は繋牧21.9%, 壁換気扇(ウインドファン)11.8%が続きこの3種で88.7%を占めた。ダクト冷気送風, 牛舎冷房(エァコン)は3.6%(25農家)であった。3)暑熱時の飼料給与について, 農家が特に留意している点は良質飼料の給与, ミネラル食塩の給与, サイレージ給与等栄養面を配慮した農家が多く(83.4%), 飼料調理, 給与方法, 給与時間帯の配慮には関心が低かった。4)防暑対策を行なって, 特に効果があったものとして, 乳量減少の防止, 分娩事故, 疾病の防止をあげた農家が多かった。5)今後の防暑法に, とり入れたいものとして, 庇陰樹の植栽をあげた農家が約21.6%(148農家)で1番多かった。
著者
石崎 三郎
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.63-68, 1978-03-15

19の大学付属農場に飼われている乳牛について調査を行ない、飼養法と利用可能なふん尿、同汚水の生産量との関係を検討した。調査は農場の立地条件、乳牛飼養の構造、飲用水量および雑用水量、利用可能なふん尿量、ふん尿の処理工程などについてである。利用可能なふんの量は、乳牛が牛舎内にとどまる時間の長短に影響されることが多い。完全な屋外放牧の場合は、ゼロとなる。この調査における成牛の年平均のふんの量は5〜38kg/頭・日の範囲にあった。利用可能な尿の量は、成牛の年平均で0〜24l/頭・日の範囲に分布した。しかし、その測定には、雨水や雑用水の一部が混入した恐れがある。成牛の飲用水量は、飼料中の含水量の差違、気温の高低など産乳量の多少、こぼし水の多少などの原因で変化する。年平均の飲用水量は20〜86l/頭・日の範囲にあったが、おおむね25〜50lの範囲に分布すると見てよいと考えられる。乳牛飼料のための雑用水量については、大学付属農場によって大差があり、成牛の年平均で26〜127l/頭・日の範囲にあったが、大部分のものは35〜70l/頭・日の範囲に含まれると考えられた。その内訳について考察すれば、搾乳関係の雑用水量は13〜25l/頭・日程度であって、変動は比較的に少ないが、牛体洗浄、牛舎洗浄関係などの水量には大差のあることが認められた。
著者
石橋 義幸
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.125-131, 1985-03-15

子豚は, 風を忌避する性質があることから子豚の損耗要因の60〜80%を占める圧死事故の防止を目的に, 送風による圧死防止装置の開発を行なった。その結果場内実証試験では.試験区52腹, 520頭の子豚のうち, 圧死は14頭(2.7%)に対し, 対照区では, 92腹792頭の子豚中、圧死事故は49頭(6.17%)発生していた。一方場外における実証試験で, 試験区において45腹, 521頭の子豚に圧死の発生はなく.対照区では, 51腹, 543頭に対し53頭(9.76%)の圧死事故が発生していた。またこの両区の育成率は, 試験区の94.8%に対し, 対照区85.1%と本装置を使用した効果は顕著であった。このことから, 送風による子豚の圧死防止装置は, 規模拡大傾向にある養豚の一貫経営に大きく貢献し得るものと考えられる。
著者
石井 幹 三塚 あけみ 安部 直重 高崎 宏寿 大宮 正博 金子 香代子
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.93-105, 1981-03-15

屈斜路酪農研修施設において, 1979年5月と7月の2回に分けて, それぞれ15頭づつ導入したホルスタイン種去勢牛29頭に異性双児の雌1頭を含む30頭の間に行われた角突きと, 最高位牛を中心とする社会的順位の決定について, 春に1回, 夏に5回, 計6回調査して, 次のような結果をえた。1.第1回調査〔春期導入牛15頭(去勢牛14頭と雌1頭)〕1)新しく編成のうえ放牧した牛群は, 1日目には激しく闘ったが, 3日目には落着いた。放牧牛1頭1時間当りの角突き回数は1日目が1.3回, 2日目が0.8回, 3日目が0.08回であった。2)角突きでは体重の重い牛が全組み合わせの83%を勝ち, かつ社会的順位が上位の牛はいずれも平均体重より大きかった。3)最高位牛は最も大きい牛であった。4)異性双児の雌牛は10頭の去勢牛と闘い全敗して, 社会的順位は最下位となった。5)最高位牛が群のリーダーになった。6)最上位牛4頭には二つの三角関係があり, 順位型態は直線的, 絶対的ではなかった。2.第2回調査(春期導入牛15頭)1)春期導入牛群の上位牛における社会的順位には, 導入約3ヵ月後に若干の変化があった。2)第一順位とリーダーの地位にある牛は変らなかった。3)異性双児の雌牛の最下位という順位にも変更がなかった。3.第3回調査〔夏期導入牛15頭(去勢牛)〕一カ所に集められた後導入された夏期導入牛群には, 激しい闘争がみられなかったので, この牛群の社会的順位は分らなかった。4.第4回調査(夏期導入牛15頭と春期導入牛の最も体重の軽い3頭, 計18頭)1)夏期導入牛群に春期導入牛のなかの最も体重の軽い牛3頭を合流させたところ, 合流牛の異性双児の雌牛が先住牛群に対して, 最初の積極的闘争を行った。この雌牛は勝率0.93(13頭/14頭)をあげ, 最高位牛にだけ負けた。2)不明であった夏期導入牛群の最高位牛が明らかになった。それは異性双児の雌牛に勝った去勢牛であったが, 体重は群の平均値に近かった。5.第5回調査(夏期導入牛15頭と春期導入牛9頭, 計24頭)第4回調査の18頭の牛群に, 残りの春期導入牛群のなかの体重の軽い6頭を合流させたところ, 先住牛群の最高位牛が全合流牛と闘い全勝し, かつ全群のなかでも勝率1.00(9頭/9頭)をあげて, 新しい牛群の最高位牛となった。6.第6回調査(夏期導入牛15頭と春期導入牛15頭, 計30頭)第5回調査の24頭の牛群に, さらに春期導入牛の残りの6頭を合流させたところ, 春期導入牛群の最高位牛が勝率1.00(10頭/10頭)をあげて, 全群のなかで第一順位を占めた。7.先住牛群が休息形の時に牛を合流させても, 先住牛群が食草を開始するまで角突きを行わなかった。しかし, 食草時に合流させ屈斜路酪農研修施設において, 1979年5月と7月の2回に分けて, それぞれ15頭づつ導入したホルスタイン種去勢牛29頭に異性双児の雌1頭を含む30頭の間に行われた角突きと, 最高位牛を中心とする社会的順位の決定について, 春に1回, 夏に5回, 計6回調査して, 次のような結果をえた。1.第1回調査〔春期導入牛15頭(去勢牛14頭と雌1頭)〕1)新しく編成のうえ放牧した牛群は, 1日目には激しく闘ったが, 3日目には落着いた。放牧牛1頭1時間当りの角突き回数は1日目が1.3回, 2日目が0.8回, 3日目が0.08回であった。2)角突きでは体重の重い牛が全組み合わせの83%を勝ち, かつ社会的順位が上位の牛はいずれも平均体重より大きかった。3)最高位牛は最も大きい牛であった。4)異性双児の雌牛は10頭の去勢牛と闘い全敗して, 社会的順位は最下位となった。5)最高位牛が群のリーダーになった。6)最上位牛4頭には二つの三角関係があり, 順位型態は直線的, 絶対的ではなかった。2.第2回調査(春期導入牛15頭)1)春期導入牛群の上位牛における社会的順位には, 導入約3ヵ月後に若干の変化があった。2)第一順位とリーダーの地位にある牛は変らなかった。3)異性双児の雌牛の最下位という順位にも変更がなかった。3.第3回調査〔夏期導入牛15頭(去勢牛)〕一カ所に集められた後導入された夏期導入牛群には, 激しい闘争がみられなかったので, この牛群の社会的順位は分らなかった。4.第4回調査(夏期導入牛15頭と春期導入牛の最も体重の軽い3頭, 計18頭)1)夏期導入牛群に春期導入牛のなかの最も体重の軽い牛3頭を合流させたところ, 合流牛の異性双児の雌牛が先住牛群に対して, 最初の積極的闘争を行った。この雌牛は勝率0.93(13頭/14頭)をあげ, 最高位牛にだけ負けた。2)不明であった夏期導入牛群の最高位牛が明らかになった。それは異性双児の雌牛に勝った去勢牛であったが, 体重は群の平均値に近かった。5.第5回調査(夏期導入牛15頭と春期導入牛9頭, 計24頭)第4回調査の18頭の牛群に, 残りの春期導入牛群のなかの体重の軽い6頭を合流させたところ, 先住牛群の最高位牛が全合流牛と闘い全勝し, かつ全群のなかでも勝率1.00(9頭/9頭)をあげて, 新しい牛群の最高位牛となった。6.第6回調査(夏期導入牛15頭と春期導入牛15頭, 計30頭)第5回調査の24頭の牛群に, さらに春期導入牛の残りの6頭を合流させたところ, 春期導入牛群の最高位牛が勝率1.00(10頭/10頭)をあげて, 全群のなかで第一順位を占めた。7.先住牛群が休息形の時に牛を合流させても, 先住牛群が食草を開始するまで角突きを行わなかった。しかし, 食草時に合流させると, ただちに闘争を行った。8.体重差が大きい牛群では, 体重が最高位牛を決める最主要々因であった。しかし, 体重差の小さな半群では, 体重が決定的要因ではなかった。家畜の管理16(3) : 93-105.1981 1980年11月18日受理
著者
干場 信司 五十部 誠一郎 佐藤 義和 堂腰 純 曽根 章夫 岡本 全弘
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.73-80, 1988-03-10

カーフハッチの有効性は, 空気の新鮮さと1頭ずつの隔離飼養による疾病の感染防止に基ずいていると考えられるが, 同時にカーフハッチ自体は, 屋外の気象条件を子牛にとって少しでも快適なものとする役割を持っている。本報では, 冬期を対象とした前報にひきつづき, 夏期におけるカーフハッチ内気象環境の改善効果を知る目的で, 子牛のカーフハッチ利用行動と気象環境との関係を検討した。行動調査は, 北海道十勝地方において、7月から9月にわたり8頭の子牛を一般型, 通風型, FRP製, 連鎖型の4種類のカーフハッチに収容して実施した。得られた結果は, 次の通りであった。1)一般型, 通風型およびFRP製のカーフハッチに収容された子牛は, 日中(日の出から日の入りまで)の52%ないし61%をカーフハッチ内で過ごした。これは, 冬期の約80%に比べ, 著しく低い利用率であった。これに対して連鎖型カーフハッチに収容された子牛は, 78%ないし80%の高い利用率を示した。2)冬期間カーフハッチ利用率との間に極めて高い相関を示した風速は, 夏期には, 通風型カーフハッチに収容された3頭のうちの1頭にのみ有意な相関が認められたが, 他の7頭には有意な相関は認められなかった。3)降雨はカーフハッチ利用率に大きく影響を与えており, 降雨日には, 無降雨日の1.3倍ないし1.6倍の利用率を示した。4)通風型カーフハッチに収容された3頭のうちの1頭と一般型カーフハッチに収容された一頭の計2頭の子牛については, 屋外気温および屋外黒球温度とカーフハッチ利用率との間に有意な正の相関が認められ, これらのカーフハッチに防暑効果があることを伺わせた。5)素地のままのFRP製カーフハッチに収容された子牛のカーフハッチ利用率と日射量および日照時間との間には有意な負の相関が認められ, FRP製カーフハッチは防暑効果を有していないことが推察された。6)北海道において, カーフハッチは夏・冬それぞれ異なった機能, つまり冬には風に基ずく寒さを防ぐ機能を持ち, 夏には雨よけとしての機能を持っていることが明らかになった。