著者
矢澤 徳仁
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

膠原病におけるB細胞の活性化は自己抗体産生のみならず種々の症状発現にも関与することが示唆されている。CD40リガンド(CD40L : CD154)はT細胞や血小板に発現し,CD40からのシグナルを介してB細胞やマクロファージ,樹状細胞などを活性化する作用をもつが,血中に存在する可溶性のCD40L(soluble CD40L ; sCD40L)が膠原病の病態に関与していることが示唆されている。われわれは全身性強皮症患者血清中のsCD40Lの値をELISAを用いて測定した。対象は全身性強皮症70例で,うちdiffuse型が42例,limited型が28例であった。これらの症例はすべてアメリカリウマチ学会の診断基津を満たしており,他の膠原病を示唆する所見は認められなかった。年齢,性を一致させた健常人25例をコントロールとした。全身性強皮症患者ではコントロール群と比較して有意にsCD40L値が高値であった。コントロールの平均+3SDをカットオフ値としたところ,全身性強皮症患者70例中31例(44%)にsCD40L値の上昇が認められた。病型別にはsCD40L上昇例はdiffuse型に多く,%VCおよび%DLCOと正の相関が認められ,肺線維症の存在との相関していた。以上より,sCD40Lは全身性強皮症の病態,特に肺線維症に関与している可能性が示された。さらに血清sCD40L値の上昇している例において末梢血リンパ球のCD40L発現量を検討したが有意な上昇は認められなかった。