- 著者
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矢萩 美和
鈴木 重行
後藤 百万
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.A0823, 2006 (Released:2006-04-29)
【目的】本邦では治療を必要とする腹圧性尿失禁患者が現在約500万人いるとされている.しかしこれに対する理学療法評価および介入法の確立はされていない.今回は腹圧性尿失禁患者を対象として研究を実施する前段階として,健常女性(尿失禁のない経産婦)を対象に骨盤底筋群の機能評価を定量化し,基礎データを得ることを目的とした.また,本研究に対する対象者の主観的評価を把握するために測定後アンケート調査を行った.【対象と方法】本研究は,名古屋大学医学部倫理委員会の承諾を得てから実施した.対象は,健常女性(尿失禁のない経産婦)24名とした.平均年齢は53.2±10.1歳,平均出産回数は2.2±0.6回,平均Body Mass Index(BMI) は21.9±2.2であった.方法は,臥位と立位にて膣センサー(Cardio Design 社製 Peritron)を膣へ挿入した後,骨盤底筋群の持続収縮を30秒間行い,骨盤底筋群の最大収縮圧,平均収縮圧,収縮持続時間,仕事率を測定した.また,アンケートは膣センサーの使用感,骨盤底筋群収縮・弛緩獲得の難易度,肢位別による骨盤底筋群の収縮・弛緩の難易度の違い等を中心とした9項目について調査した.【結果】骨盤底筋群の最大収縮圧の平均値は臥位で35±18(cmH2O),立位で31±11(cmH2O),平均収縮圧の平均値は臥位で19±8(cmH2O),立位で20±7(cmH2O),持続収縮時間の平均値は臥位で18±2(秒),立位で19±2(秒),仕事率の平均値は臥位で351±159(cm秒;平均収縮圧×収縮持続時間),立位で362±140(cm秒;平均収縮圧×収縮持続時間)であった.以上の全てにおいて臥位と立位における有意差はなかった.アンケート結果は,膣センサーの使用感の項目で,多少なりとも不快感を生じた人が半数以上を占めた.骨盤底筋群の収縮・弛緩の難易度は,約90%の人が数度の練習により要領がつかめたと答えている.また,肢位別による収縮・弛緩の難易度では臥位の方が容易であったと答えた人が約80%であった.【考察】健常者の骨盤底筋群の筋活動は,膣圧の定量化による側面からみると肢位により左右されないことが明らかとなった.しかし,最大収縮圧の平均値は臥位の方が大きいことと,アンケートから臥位の方が容易であったと答えている人が大多数を占めていることを考慮すると,理学療法介入時の肢位は臥位の方がより適切ではないかと考えられる.また,膣センサーの使用感に問題があることも明らかとなり,測定時により不快感の少ない機器の改良が必要であると考えられた.今後は今回の基礎データを基に腹圧性尿失禁患者との比較を検討していきたい.