- 著者
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矢部 五郎
- 出版者
- 地域安全学会
- 雑誌
- 地域安全学会論文報告集
- 巻号頁・発行日
- no.4, pp.355-360, 1994-08
地震危険度は各種の要因について分析され既にゾーニング(zonation)が行われている。津波の危険度についても研究が行われている。しかし、問題がない訳ではない。すなわち、昔の津波対策は次のようであった。我が国の津波対策は明治29年(1896)6月15日の明治三陸地震津波と昭和8年(1933)3月3日の三陸地震津波を教訓としている。したがって、次のことが常識となっていた。(1)津波被害は三陸海岸で発生する(2)津波はいわゆるリアス式海岸すなわち河口や狭い湾で増幅される(3)津波対策は津波堤防や防波堤を建設して浸水を防ぐ(4)津波警報を聞いてから水門を閉めるしかし、昭和58年(1983)5月26日の日本海中部地震と平成5年7月12日の北海道南西沖地震による津波はこの常識とは違う被害を発生した。(1)日本海海岸でも津波被害が発生する(2)遠浅の海岸でも津波被害が発生する(3)津波堤防が流された(4)津波警報を聞いてから津波が来襲するまでの時間が短いこれらの事実に基づいて、津波対策を再検討する必要が生じた。著者は津波対策を再検討して津波危険度を評価する新しいコンセプトを提案し、危険度によるマイクロゾーニング(ゾーネーション)を試みた。この試案は津波危険度を再検討する研究を刺激するためのもので、多くの研究者が関心を持つことを期待している。