- 著者
-
七田 恵子
矢部 弘子
巻田 ふき
- 出版者
- (財)東京都老人総合研究所
- 雑誌
- 一般研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1991
本研究の目的は、痴呆性老人のケアのための評価項目を探査することにある。看護婦は、痴呆性老人の身体的異常を早期に、的確に、察知し、対応しなければならないが、熟練した看護婦はあまり意識せずに適切に対処している。そこで、痴呆性老人の健康状態の変化を、看護婦がどのように察知し、どう判断するか、幾つかの方法により分析を試み、ケアにつながる評価項目を見出だそうとした。(1)老人専門病院の病歴から精神症状および身体症状が記載してあるものを探し、どう対処したか拾い出す、(2)臨床場面での看護婦の判断とその根拠について討議した、(3)老人専門病院の入院患者記録から入院時症状と確定診断名との関連を分析した。その結果、痴呆性老人の健康状態が悪い時は、表情、会話、意識状態、活動性、日常生活の変調といった全身状態として表現されることがわかった。ぼんやりしている、会話が少なくなった、日常生活での動きが悪くなったなど、身体症状というより、生活上に変調をきたす現れ方をした。痴呆群では、自覚的訴えができないためか、歩行困難、出血、発熱、喘鳴、黒色便、転倒、呼吸困難といった他覚症状で入院していた。家族は相当重い他覚症状が発現しないと受診しないようである。痴呆患者は、自覚症状の訴えが少なく、他覚症状、全身症状、生活上の変調に注意して観察し、評価しなければならないと結論された。