著者
丸森 健司 矢部 清寿 宮本 洋寿 小林 寛 佐藤 雅昭
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.112-116, 1993-01-01
被引用文献数
3

症例は46歳の男性.心窩部痛を主訴として来院した.上部消化管造影および上部消化管内視鏡検査にて,十二指腸球部小彎側に一部陥凹を伴った粘膜下腫瘍を認め,生検を施行したところ,平滑筋由来の分類不可能な腫瘍細胞があり,CT検査でも十二指腸に腫瘍像を認めた.このため十二指腸粘膜下腫瘍の診断のもとに開腹.腫瘍は十二指腸球部小彎側と膵頭部の間に存在したが,膵臓など周囲臓器との癒着なく,十二指腸切開腫瘍摘出術を施行した.組織所見では,紡錘型および多角型の類上皮性細胞が多数存在し,その豊富な細胞質は好酸性であった.以上より腫瘍は平滑筋芽細胞腫と診断された.平滑筋芽細胞腫は,その多くが胃原発であり,十二指腸原発は極めて希である.今回われわれは十二指腸原発平滑筋芽細胞腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.