著者
矢部 裕一朗
出版者
一般社団法人 日本フットケア学会
雑誌
日本フットケア学会雑誌 (ISSN:21877505)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.7-12, 2019-03-30 (Released:2019-03-30)
参考文献数
5

【要旨】関節リウマチ足部疾患は見逃されやすいため,患者の足,靴,歩き方を見ること,患者の訴えを生活に合わせて伺うことが大切と考える.「爪が切れるか」の動作を確認して,下肢だけでなく上肢機能体幹機能も確認する.「下肢浮腫は,両側 or 片側?」,「レイノー現象,血管炎はあるか」,「皮膚潰瘍の確認」,「胼胝の確認」,「皮膚乾燥」,「靴の履き方,擦れ,靴紐が締解可能か」,「服薬,外用剤が使用できるか確認」等が観察ポイントと考える.フットケアチーム(患者,介護ケアする家族,地域医療関係者,医師,看護師,理学作業療法士,義肢装具士,靴小売業,ケアマネージャー等)で問題点の共通化をして,双方向性のコミュニケーションを持って合意を形成して,問題点の改善を図る.具体的に例示すると,MTP 関節周囲の足底胼胝では,メタタルザルバー,メタタルザルパッドを胼胝のやや踵よりに設置し,必要に応じ足底挿板を処方し,義肢装具士,靴業者に依頼している.足趾関節で PIP 関節炎や外反母趾的 MTP 関節炎では,靴アッパーヴァンプの靴革を鞣してあたる部位の靴革を伸ばす.関節リウマチフットケアでは,足部疾患の問題点を総括,ケアを継続していくことが必要と考える.
著者
菅田 由香里 上内 哲男 矢部 裕一朗
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0908, 2008

【はじめに】<BR>脳卒中片麻痺患者における大腿骨頚部骨折はしばしば発生し、その手術後の理学療法に関しての報告はいくつかある。しかし骨折治療後、再度同側の大腿骨骨折を起こした症例の報告は少なく、さらにステム周辺での骨折例はほとんど見当たらない。今回我々は、脳卒中片麻痺患者の人工骨頭置換術後に、同側のステム中間部での大腿骨粉砕骨折の症例に対する理学療法を経験したので報告する。<BR>【症例紹介】<BR>69歳、男性。診断名:右大腿骨骨折。現病歴:平成19年7月、外出先にて居眠り中椅子から転落し受傷。右大腿骨骨折と診断され、当院入院。保存療法にて経過観察となった。既往歴:44歳で脳梗塞右片麻痺(Brunnstrom Recovery Stage上下肢4)、失語症。61歳で転倒により右大腿骨頚部骨折にて右人工骨頭置換術施行。入院前レベル:屋外T字杖歩行自立。ADLはすべて自立。週5回作業所に通っていた。<BR>【理学療法経過】<BR>受傷後翌日より、ベッドサイドにて開始。骨折部の安静のため、麻痺側股関節周囲の筋収縮と股関節回旋の動きは禁忌であり、麻痺側下肢への積極的なアプローチは困難であった。そのため離床にむけてのアプローチとして、ギャッジアップによる起立性低血圧の予防、脱臼予防に対してのポジショニング、麻痺側の関節拘縮予防、非麻痺側下肢の筋力強化を行った。受傷5週で仮骨形成を認め、全荷重で平行棒内歩行練習を開始し、7週よりT字杖歩行練習開始した。16週で良好な骨癒合が得られ、自宅退院となった。退院時レベル:屋内T字杖自立、屋外T字杖歩行見守りレベル。院内ADLは見守りにてすべて可能。<BR>【考察】<BR>今回、脳卒中片麻痺を合併した人工骨頭置換術後のステム中間部での大腿骨粉砕骨折という症例を経験した。本症例では、保存療法にて長期間の臥床を余儀なくされ、さらに骨折部の安静のため早期リハを積極的に行うことができなかったものの、仮骨形成後スムーズに離床することができ、退院時には受傷前に近い機能を再獲得して自宅退院することができたことは良好な結果であったといえる。臥床期間中では安静のためできることが限られている中で、離床への働きかけができたことはよい結果に繋がったのではないかと考える。また、脳卒中片麻痺患者の骨折では、片麻痺の存在や長期臥床による合併症を予後悪化因子の1つにあげている報告があるが、本症例では保存療法による長期臥床という悪条件の中良好な成績であったことは、麻痺の程度が比較的よかったこと、受傷前の歩行能力が高かったことなども影響したと考える。<BR><BR><BR>