著者
菅田 由香里 上内 哲男 矢部 裕一朗
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0908, 2008

【はじめに】<BR>脳卒中片麻痺患者における大腿骨頚部骨折はしばしば発生し、その手術後の理学療法に関しての報告はいくつかある。しかし骨折治療後、再度同側の大腿骨骨折を起こした症例の報告は少なく、さらにステム周辺での骨折例はほとんど見当たらない。今回我々は、脳卒中片麻痺患者の人工骨頭置換術後に、同側のステム中間部での大腿骨粉砕骨折の症例に対する理学療法を経験したので報告する。<BR>【症例紹介】<BR>69歳、男性。診断名:右大腿骨骨折。現病歴:平成19年7月、外出先にて居眠り中椅子から転落し受傷。右大腿骨骨折と診断され、当院入院。保存療法にて経過観察となった。既往歴:44歳で脳梗塞右片麻痺(Brunnstrom Recovery Stage上下肢4)、失語症。61歳で転倒により右大腿骨頚部骨折にて右人工骨頭置換術施行。入院前レベル:屋外T字杖歩行自立。ADLはすべて自立。週5回作業所に通っていた。<BR>【理学療法経過】<BR>受傷後翌日より、ベッドサイドにて開始。骨折部の安静のため、麻痺側股関節周囲の筋収縮と股関節回旋の動きは禁忌であり、麻痺側下肢への積極的なアプローチは困難であった。そのため離床にむけてのアプローチとして、ギャッジアップによる起立性低血圧の予防、脱臼予防に対してのポジショニング、麻痺側の関節拘縮予防、非麻痺側下肢の筋力強化を行った。受傷5週で仮骨形成を認め、全荷重で平行棒内歩行練習を開始し、7週よりT字杖歩行練習開始した。16週で良好な骨癒合が得られ、自宅退院となった。退院時レベル:屋内T字杖自立、屋外T字杖歩行見守りレベル。院内ADLは見守りにてすべて可能。<BR>【考察】<BR>今回、脳卒中片麻痺を合併した人工骨頭置換術後のステム中間部での大腿骨粉砕骨折という症例を経験した。本症例では、保存療法にて長期間の臥床を余儀なくされ、さらに骨折部の安静のため早期リハを積極的に行うことができなかったものの、仮骨形成後スムーズに離床することができ、退院時には受傷前に近い機能を再獲得して自宅退院することができたことは良好な結果であったといえる。臥床期間中では安静のためできることが限られている中で、離床への働きかけができたことはよい結果に繋がったのではないかと考える。また、脳卒中片麻痺患者の骨折では、片麻痺の存在や長期臥床による合併症を予後悪化因子の1つにあげている報告があるが、本症例では保存療法による長期臥床という悪条件の中良好な成績であったことは、麻痺の程度が比較的よかったこと、受傷前の歩行能力が高かったことなども影響したと考える。<BR><BR><BR>
著者
田中 浩介 浦辺 幸夫 是近 学 勝 真理 大窪 伸太郎 松井 洋樹 大林 弘宗 菅田 由香里 越田 専太郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0397, 2006 (Released:2006-04-29)

【目的】非接触型の膝前十字靭帯(ACL)損傷は、ジャンプ着地動作、ストップ動作、カッティング動作などのスポーツ動作時に多く発生している。近年のビデオ解析により、動作時の脛骨の過剰な回旋や脛骨の前方移動がACL損傷を助長する可能性があると考えられている。我々は動的に脛骨の移動量および大腿骨、脛骨の回旋角度を測定可能な膝関節動作解析装置(以下、装置)を製作し、3次元での運動解析を行っている(2005)。本研究は、装置を用いてACL損傷好発肢位を抑制するために開発された膝サポーターの効果を運動学的に解析することを目的とした。【方法】対象は下肢に特別な既往のない女性10名とした。対象は課題動作として、30cm台から両脚での着地動作を行った。装置を用いて着地動作中の大腿骨および脛骨の回旋角度を測定した。角度表記は外旋をプラス、内旋をマイナスとした。本研究で用いた膝サポーターは、ACL損傷の受傷好発肢位を抑制するために開発されたものであり、テーピング効果をより得られるように工夫された構造を有している。測定は、膝サポーター非装着時、比較のための既存膝サポーター装着時、開発された膝サポーター装着時にそれぞれ行い、膝サポーター装着により大腿骨および脛骨の回旋角度に差がみられるか検討した。【結果】足尖接地時における大腿骨および脛骨回旋角度(平均値±標準偏差)は、それぞれ膝サポーター非装着時に33.6±14.9度、-27.0±15.8度、既存膝サポーター装着時に21.7±11.7度、-21.3±12.1度、開発された膝サポーター装着時に5.8±2.3度、-4.3±0.4度であった。大腿骨に対する脛骨の回旋角度は膝サポーター非装着時に-62.4±37.3度、既存膝サポーター装着時に-43.1±23.4度、開発された膝サポーター装着時に-10.1±2.7度であった。いずれも膝サポーター非装着時、既存膝サポーター、開発された膝サポーターの順に絶対値は小さな値となった。【考察】本研究では、膝サポーター装着によりジャンプ着地時の大腿骨および脛骨の回旋角度が変化するかを確かめた。膝サポーター装着により大腿骨および脛骨の回旋角度の絶対値は減少する傾向がみられ、開発された膝サポーターのほうが、既存のサポーターよりも回旋角度の抑制が強かった。また、足尖接地時には、いずれも脛骨は大腿骨に対して相対的に内旋していたが、開発されたサポーター装着時に最も小さな値であった。ACLは走行上、下腿が内旋した際に伸張される。開発された膝サポーターの装着により、着地初期の内旋角度は非装着時と比較して、およそ1/6まで減少していた。以上のことより、開発された膝サポーターは着地時のACLに加わるストレスを減少させ、ACL損傷を予防することができる可能性が示唆された。