- 著者
-
矢野 友紀
中尾 実樹
- 出版者
- 九州大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2001
哺乳類においては、補体成分C3の活性化断片C3dが、B細胞上の特異的レセプター(CR2)に結合し、正常な抗体産生応答を支持していることが明かとなっている。本研究では、硬骨魚類においても、哺乳類のC3dと相同な活性化断片が生成するのか、CR2と相同なC3dレセプターが存在するのか、およびC3dが獲得免疫に及ぼす影響するのかについて精査した。まず、コイ血清をザイモサンで処理し、補体第2経路を活性化すると、ヒトC3dに似たサイズ(35kDa)の断片が精製することを確認した。この断片のN末端アミノ酸配列を決定し、これがコイのC3dであることを確認した。2種の主要なコイC3アイソフォーム(C3-H1とC3-S)の両者からC3dが生じることも確認した。ただし、C3dへの分解効率は、C3-H1の方が高かった。両アイソフォーム由来のC3dをグルタチオン(GST)-S-トランスフェラーゼとの融合タンパク質として発現させることに成功した。これら組み換えタンパク質(GST-C3d-H1とGST-C3d-S)は、コイ末梢血リンパ球に対してMgイオン非依存的に結合性を示した。抗コイC3ウサギIgGはこの結合を濃度依存的に阻害した。一方、対照として用いたGSTは全く結合しなかった。C3d-H1とC3d-Sでは、前者の方が高い結合能を示した。以上の結果から、コイにおいても、哺乳類と同様にC3d断片が生じ、これを認識するCR2様のレセプターがリンパ球上に存在することが示唆されるとともに、コイにおけるC3遺伝子多重化によるC3の機能分化のさらなる証拠が得られた。