著者
武藤 憲哉 菅谷 一樹 全田 吏栄 三澤 友誉 矢野 徹宏 鈴木 剛 小野寺 誠 伊関 憲
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.607-610, 2022-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
10

心室細動の原因が薬剤性の低カリウム血症と考えられた症例を経験した。症例は70歳,女性。就寝中に唸り声を上げていたところを娘に発見され,胸骨圧迫された。救急隊が心室細動に対して3回の電気ショックを施行し,自己心拍再開した。検査所見からは虚血を示唆する所見は乏しく,血清カリウム2.7mEq/L と低値を認めていた。芍薬甘草湯およびイトラコナゾールが処方されていたことから,薬剤性低カリウム血症により心室細動をきたしたと判断した。緊急カテーテル検査は施行せず,電解質補正,目標体温管理療法を行った。不整脈の出現はなく経過し,神経学的予後も良好で第28病日に近医へ転院した。芍薬甘草湯は甘草を含有しており,低カリウム血症となる。イトラコナゾールにも低カリウム血症の副作用があり,今回どちらが被疑薬かは不明であるが,薬剤性の低カリウム血症が原因で心室細動をきたしたと考えられた。高齢者では処方理由が不明であっても,副作用に電解質異常がある薬物を内服している可能性があり,低カリウム血症を認めた場合には,薬剤性の可能性についても注意を払う必要がある。