著者
田澤 沙也香 山本 亮 佐藤 昌弘 矢﨑 純子
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 2022年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.5, 2022 (Released:2022-07-08)

蛍光観察では、アコヤ真珠の浜揚げ珠は黄色、漂白珠は青白色などの特徴があり、鑑別でも用いられている。しかし真珠は生体生成物であるため個々のばらつきがある。また、一般的な紫外線ライトは、点滅がわかるように青色等の可視波長の色が加えられているため、観察真珠の蛍光色に青が加わり、本来の色とやや異なって見えている場合も考えられる。本発表では、まず目視で可視波長カットのフィルターを用いた長波紫外線(365nm 付近)照射時の試料真珠の蛍光を観察した。次に、観察した試料真珠の 3 次元蛍光分光測定を行い、目視観察との比較検討を行い鑑別への応用を検討した。1.アコヤ真珠浜揚げ珠と漂白珠浜揚げ、漂白試料真珠を長波紫外線照射下で観察すると、浜揚げ珠は黄色味を帯び、漂白珠は青白色である。紫外線カットフィルターを通して照射したところ、漂白珠にもやや黄色味は確認できたが、浜揚げ珠に比べ青みが強い。次に、試料真珠の 3 次元蛍光分光測定を行ったところ、漂白前後で明らかなピークの変化が見られた。浜揚げ珠は、励起波長 290nm付近で 345nm 付近の蛍光ピークが現れ、漂白を行うことでこの蛍光は減少し、励起波長380nm 付近で 450nm 付近の蛍光が強くなり、漂白後に蛍光の青みが強くなる現象が測定された。アコヤ真珠の浜揚げ珠は、いわゆるアコヤ吸収と呼ばれる 3 つの小さな吸収があるが、年月で消失するとも言われ、蛍光測定の併用で、より正確に浜揚げ珠(未処理珠)の判別ができるようになると考えられる。2.その他の試料真珠放射線照射によって蛍光が弱くなることが報告されているが、処理真珠と未処理ブルー珠についても同様に観察測定した。