著者
村上 正志 鈴木 隆央 大手 信人 石井 伸昌
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.55-61, 2015 (Released:2015-04-28)
参考文献数
23
被引用文献数
2

福島県北部の森林における,放射性セシウム(137Cs)の鳥類への生物的な移行を検討した.福島第一原発の事故により放出された放射性セシウム(137Cs)は,東北地方を中心に広く拡散した.森林生態系において,林床のリターに蓄積された放射性セシウムが,鳥類にどの程度取り込まれたかを明らかにするために,5種の鳥類,カビチョウGarrulax canorus,ヒヨドリHypsipetes amaurotis,ヤブサメUrosphena squameiceps,コサメビタキMuscicapa dauurica,ウグイスCettia diphoneの筋肉および肝臓について,137Cs濃度を計測し,森林土壌からの移行係数(Transfer Factor)を算出した.解析した5種の鳥類のうち,ヤブサメにおいて,他種の10倍程度の高い137Cs濃度が観測された.このように,高い値が得られた理由は不明であるが,調査地ではリター層が高濃度に汚染されており,ヤブサメが腐植連鎖に連なり,より高い放射性物質を含んだ餌を利用したことが考えられる.しかし,同様に林床で採餌することが知られている,ガビチョウの137Cs濃度は他種と同程度の値であり,今回の結果から,採餌場所や食性と,放射性セシウムの鳥類への移動の多寡を関連づけることはできないが,生息場所や食性の違いは,少なからず,放射性セシウムの生物的移行の程度に影響していると予想される.
著者
遠藤 いず貴 石井 伸昌 大橋 瑞江 松本 一穂 内田 滋夫
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.321-329, 2017

<p>TRU廃棄物の地層処分生物圏評価において,気体の<sup>14</sup>Cの植物体への移行が考慮されていない。気体の混合に寄与する風を評価するため,2つのイネ科植物群落の3測定高で風速を測定した。両群落のバイオマスは同じだったが,群落-2に比べて群落-1の草丈は78%であり,群落密度は2倍だった。群落上に対する群落内の風速は密な群落(群落-1)で制限された。群落密度が群落内の気体の滞留および植物への<sup>14</sup>Cの移行に影響することが示唆された。</p>