著者
稲垣 史生 諸野 祐樹 星野 辰彦 井尻 暁 肖 楠 鈴木 志野 石井 俊一 浦本 豪一郎 寺田 武志 井町 寛之 久保 雄介
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.1, pp.77-92, 2018-01-15 (Released:2018-05-30)
参考文献数
71
被引用文献数
3 2

約半世紀の歴史を持つ海洋掘削科学は,プレートテクトニクスの実証や過去の劇的な地球環境変動など,教科書にその名を刻む輝かしい科学的成果をもたらしてきた.中でも,「海底下生命圏」の発見による生命生息可能域の大幅な拡大は,それまでの地球生命科学の概念(パラダイム)を覆すマイルストーン的な科学成果の一つである.これまでに,世界各地の海洋底から掘削されたコアサンプルの多面的な分析研究により,水・エネルギー供給が極めて限られた海底下環境に,固有の進化を遂げた膨大な数の未知微生物が生息していることが明らかとなっている.その生態系機能は,極めて低活性な生命活動により支えられている静的なものであるが,地質学的時間スケールで,地球規模の元素循環に重要な役割を果たしていることが明らかとなってきた.
著者
石井 俊一
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

微生物燃料電池プロセスの高効率化に関する研究として、空気正極微生物燃料電池を用いて、下水処理場の実排水サンプルを用いた電気産生試験を行った。一年以上の長期運転の結果、約1~2週間の回分サイクルで、廃水中の有機物がほぼ完全に分解される事が分かった。処理水の水質評価を行ったところ、BODは2-6ppmまで分解され(分解率98%)、電子回収率は25%ほどであった。集積された電気産生微生物群衆の電気産生活性を解析したところ、負極の開回路電位は-250mV vs SHE、限界電流密度は、約800mA/m^2、電力密度は13mW/m^2となった。電気産生微生物の群集構造を16S rRNAによるクローン解析で解析した所、デルタプロテオバクテリアとバクテロイデテスが優占化していく事が分かった。これより、嫌気呼吸により生育するデルタプロテオバクテリアは、電極還元反応において重要な役割を果たしている事が示唆された。また、バクテロイデテスは、下水が有するさまざまな有機化合物を分解していると考えられる。これらの微生物は、電極還元反応に依存した生活を送っていると考えられる。廃水処理効率を向上するために、電気産生と処理時間の関連性を解析した。750Ωの外部抵抗による電流産生は約0.3mAであるが、回路をつなげない場合は、電流産生が起こらない。無電流条件での処理時間は、20日程度であり、電流産生により処理時間の短縮が見られた。また、ポテンシオスタットを用いて電極電位設定培養(+100mV vs SHE)を行うと、電流産生量が約4mAまで上昇した。その結果、処理時間は4日まで短縮され、電子回収率は60%まで上昇した。微生物燃料電池の内部抵抗は、装置の改良により、小さくする事が可能である事が知られている。よって、より高速な電極還元菌の集積を行い、装置の内部抵抗を小さくする事で、処理時間の短縮が可能になると考えられる。