著者
石井 敏弘 小平 朋江 篠崎 惠美子 篁 宗一 仲村 秀子
雑誌
聖隷クリストファー大学看護学部紀要 = Bulletin Department of Nursing Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
vol.21, pp.25-31, 2013-03-31

機関リポジトリとは「大学とその構成員が創造したデジタル資料の管理や発信を行うために、大学がそのコミュニティの構成員に提供する一連のサービス」であり、デジタル時代における学術研究の基盤として位置付けられる。科学、技術、医学系分野の学術逐次刊行物(雑誌、年鑑など)の価格が大幅に上昇したこと、および大学等の研究機関で生産される多様な学術情報の発信強化が社会的要求となったことを背景に機関リポジトリは誕生した。機関リポジトリはこの2つの問題に対応する方策であり、その設置には ①学術コミュニケーションを変革させる、②社会や公共の観点からみた大学等の研究機関の価値を高めるという2つの主要な意義がある。この2点は機関リポジトリの本質であり、また機関リポジトリとは如何なるものかを理解する際、あるいは機関リポジトリを如何なる構成や内容で構築するのかと各機関が検討する際に基軸とするべきことと考える。機関リポジトリは相互運用性、およびコンテンツの質保証の点で優れており、1990年代に欧米を中心に広がっていった電子図書館と一線を画するシステムである。学術機関リポジトリに蓄積されたデータは国立情報学研究所のメタデータ・データベース等に自動的に集められ、ポータルサイトであるJAIROで一括検索できる。2012年10月末の時点で国立情報学研究所のデータベースには234の機関リポジトリ、143万件超(このうち「本文あり」106万件)のコンテンツが収集されている。