- 著者
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石井 礼花
- 出版者
- 日本生物学的精神医学会
- 雑誌
- 日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, no.1, pp.7-10, 2014 (Released:2017-02-16)
- 参考文献数
- 4
このシンポジウムでは,乳児から思春期の定型および非定型発達の脳の生物学的特徴を fMRI,DTI,NIRS を用いての最近の知見を発表し,討論を行った。第 1 シンポジストのKoyama は,6 ヵ月の乳児聴覚刺激を与えた場合の resting-state の機能的結合への短期的影響および行動変化にどう関連するかを示した。第 2 シンポジストの Choi は,DTI を用いて,両親の言語的虐待や,家庭内暴力の目撃のような心理的虐待が小児期の脳に与える影響を調べた。第 3 シンポジストの Pavuluri は,fMRI や DTI の手法を用いて,小児期双極性障害の機能的構造的な脳の生物学的特徴を示した。第 4 シンポジストの高橋は,学童期 ADHD の NIRS研究で長期的 MPH の内服の脳機能への影響が休薬においても保たれていることを示した。以上のように,このシンポジウムでは,脳機能に環境がどのように作用するか,また病気の経過がどのようにて定型発達から逸脱していくかを明らかにした。このような早期の発達の段階の脳と可塑性についての研究結果は,脆弱な小児期に予防や早期の介入を行う意味を示唆し,有意義なシンポジウムであった。