著者
石井田 恵 Megumi Ishiida
出版者
同志社大学一神教学際研究センター(CISMOR)
雑誌
一神教世界 = The world of monotheistic religions (ISSN:21850380)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.65-89, 2021-03-31

近年、アメリカにおけるキリスト教シオニストの影響力に注目が集まっている。しかし、キリスト教シオニズムは1990 年代以降、東アジアでも影響力を拡大しつつある。このうち、一部の国や地域における特定の団体についての研究は存在するが、それらを体系的に扱った研究はない。そのため、一部の団体に特徴的な--いわば個別的事例を、キリスト教シオニズムに普遍的な事柄と見なし、この運動の実像を見誤る結果を招来しかねない。そこで、本稿では韓国、中文圏、日本におけるキリスト教シオニズムの歴史的展開を辿り、様々な団体による宣教活動、政治活動について概観する。そして、それぞれの組織に共通する特徴が見られる一方で、宣教活動や政治に対する積極性に関しては、差が認められること--多様性が見られることを、指摘する。また、その違いは各国のキリスト教シオニストが置かれている社会的状況や文化的違いを反映している可能性を示唆する。
著者
石井田 恵 Megumi Ishiida
出版者
同志社大学一神教学際研究センター(CISMOR)
雑誌
一神教世界 = The world of monotheistic religions (ISSN:21850380)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.58-77, 2019-03-31

近年、キリスト教シオニズムは、世界情勢を理解する上で看過できないグループとして存在感を増してきている。キリスト教シオニズムは欧米だけでなく、日本にも存在する。中田重治(1870-1939)は、日本ホーリネス教会の源流となった伝道者である。中田はユダヤ人に強い関心を持ち、1932年以降、イスラエル主義への傾倒を強めた。そして、世界の終わりにイスラエルが回復され、その時、日本人が軍事的および宗教的な使命を果たすと主張した。本稿ではイスラエル主義とも呼ばれる中田の晩年の思想を、日本におけるキリスト教シオニズムの一例として考察し、中田がユダヤ人の回復に救済史的意味を認め、ユダヤ人に過度な理想を投影していた可能性、さらにそれが多重的なユダヤ人理解を形成させ、結果的に、反ユダヤ主義を批判した中田を無意識的に反ユダヤ主義的にさせた可能性を指摘する。また、考察を通して、キリスト教シオニズムが一部のクリスチャンに支持されている理由、キリスト教シオニズムが抱える課題を明らかにすることを目指す。