著者
渡辺 幸一 石坂 隆 竹中 千里
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.997-1006, 1999-10-25
被引用文献数
6

1994年から1996年までの夏期および秋期に乗鞍岳山頂付近(標高2770m)において霧水の採取・化学分析を行ってきた。pHが4以下の強い酸性霧が夏期だけでなく、秋期においても観測された。霧水中の陰イオン成分では硫酸イオンの濃度が最も高かったが、硝酸イオン濃度に対する硫酸イオン濃度の当量比は、1960年代の乗鞍岳よりもかなり低い値であった。これは、1960年代と1990年代の日本の大気汚染の特徴が反映されているものと考えられる。 硝酸イオンに対する硫酸イオンの濃度比は秋期に比べて夏期の方が高い値であった。夏期においては、ナトリウムイオン濃度に比べて塩化物イオン濃度の方がはるかに高く、非海塩起源の塩化物イオンも霧水の酸性化に寄与しているものと考えられる。硫酸イオン濃度に対するアンモニウムイオン濃度の比も秋期より夏期の方が高かった。また、1994年の7月には、硫酸イオンが高濃度であるにもかかわらず、pHが6以上と比較的高い霧も観測された。霧水中の過酸化水素濃度は夏期においては3∼180μM程度で、平均濃度は60μMであったが、秋期においても比較的高濃度(60∼70μM)の過酸化水素が観測された。
著者
渡辺 幸一 石坂 隆 田中 浩
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.1153-1160, 1995-12-25
被引用文献数
6

大気中における過酸化物や他の微量気体(O_3,SO_2)の濃度の測定を夏から初秋にかけて、中部日本に位置する乗鞍岳の山頂付近(標高2770m)で行った。過酸化水素(H_2O_2)やオゾンは真夜中に濃度が最も高くなり、真昼に最も低くなった。深夜にH_2O_2やO_3濃度が高くなるのは上層大気の沈降によるものと考えられ、このような日変化は低地での変動とまったく逆である。また、夏の乗鞍岳では、SO_2(S(IV))をH_2SO_4(S(VI))へと酸化させる能力の指標とされている[H_2O_2]/[SO_2]の比がほとんどの期間で1より大きく、SO_2の酸化剤が十分に存在していることがわかった。すなわち、夏期においては、水滴中でのSO_2の不均質酸化が非常に速いものと考えられる。