著者
石垣 壽郎
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.49-53, 2005-03-25 (Released:2009-07-23)
参考文献数
4

確率論の数学的な考察が始まったとき, 確率は状況がもっている傾向性として考察されていたことを指摘する. そして, 本質的に確率的な過程における対象の実在的な状態と確率との関係, および, これらとわれわれの知識との関係を考察し, 確率の傾向性解釈のもとで量子力学の観測問題を再考する.
著者
石垣 壽郎
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-7, 2000-12-25 (Released:2009-07-23)
参考文献数
9

量子力学における観測命題の全体は, プール束を構成しない。したがって, 量子力学的系にすべての物理量の値を確定的に付与し, そのことによって確定的世界の描像を与え, 量子的確率を古典的確率として解釈しなおすことはできない.しかし, 物理量それぞれに関する観測命題全体はプール束を構成する.よって, 何らかの理由 (たとえば観測, あるいはそれ以外の理由) によって物理量を1つ固定すると, この物理量に関する観測命題は真偽が確定し, これらの命題についての確率を古典的確率と見なすことができる, と考えられている.この観点から, Bub and Clifton (1996) と Bub (1997) は, 量子力学に対する, 波束の収縮を含まない様々な解釈を整理し, これらの解釈には特定物理量 (apreferred observable) が一意に対応していることを示した.その基礎になっているのが, 「一意性定理 (Uniqueness Theorem) 」である.しかし, 彼らは, この定理の証明および適用に際して, 有限次元ヒルベルト空間を扱い, 無限次元ヒルベルト空間の場合は, 有限次元からの類推にとどめている (Bub (1997).122).これに対して, 以下に示すように, 無限次元ヒルベルト空間の場合は, 有限次元からは類推のできない特有の状況が現われてくる.本稿では, 無限次元ヒルベルト空間における物理量 (オブザーバブル) について, 観測命題の真偽が確定するという意味での確定的世界 (「真偽確定世界」), 物理量の値が確定するという意味での確定的世界 (「値確定世界」), さらに観測命題についての量子的確率を古典的確率として表現するという考え (「古典的確率としての表現」), これら3者間の関係を検討する.Bub and Clifton (1996) と Bub (1997) が真理値確定と見なした命題がなす部分束は, そのときどきの量子力学的状態にも依存し, 特定物理量の観測命題全体の集合よりも大きくなる場合がある.しかし, 量子力学的状態が特定物理量に関する (0以外の) どの観測命題の確率をも0としないとき, この部分束は, 特定物理量の観測命題全体がなすプール束と一致する.よって, 本稿においては, この特殊な場合に注目することにして, 物理量の観測命題がなすプール束をとり上げる.
著者
石垣 壽郎
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.39-44, 1999-12-25 (Released:2009-07-23)
参考文献数
6

量子力学的系に関する観測命題全体の集合LがBoole束を構成せず(orthomodular束),したがって,Lの命題すべてに同時に真偽を,束(以下「束」は可補束を意味する)の関係を保持するように,決定することができないことは,よく知られている。しかしまた,任意の1つのオブザーバブルRに注目するならば,このオブザーバブルに関する観測命題全体の集合はBoole束を構成し,これらの命題全体には,同時に真偽を割り振る(2値準同形写像)ことができることも,よく知られている。したがって,系の任意の(純粋)状態eに対して,あるオブザーバブルR(preferred observable)を指定するならば,Rに関する観測命題は真偽が確定していると見なすことができ,これらの観測命題に対するeによる確率は,古典的確率として扱うことができ,したがって無知解釈を与えることができるようになると考えられている。しかし,真偽確定とみなしうる命題の集合は,eとRとの関係によっては,もっと大きくとることができる。こうした状況の下で,BubとCliftonは次の条件を満たすように真理値を与えることのできるLの極大部分束D(e,R)は何か? という問題を設定した。各真理値の付値はD(e,R)上の2値準同形写像で定義され,かつ,D(e,R)の互いに両立可能な命題の集合に対してeによって定義される確率はD(e,R)に対する互いに異なる可能な真理値付値の上の測度として表現できる。このような問題設定のもとで,彼らはUniqueness Theoremを証明した(Bub and Clifton (1996))。この証明はBub(1997),4.3にもほとんどそのままの形で採録されている。しかし,この証明において具体的なD(e,R)の形を導くために設定された条件は,必要十分な条件にはなっておらず,また証明およびその結果を利用した解説は有限次元ヒルベルト空間を用いており,無限次元ヒルベルト空間におけるオブザーバブルについては,スペクトルを有限個の区間に分割して有限次元と同じように扱い,その後に区間の個数を無限大にする極限として処理されている。そのため,無限次元に特有に現れる状況は考慮されていない。したがって,(1)D(e,R)を導くための必要十分条件を設定し,(2)この条件を無限次元ヒルベルト空間に適用したときにどのような状況が生じるかを数学的に厳密に調べることが望まれる。本稿では,このうち(2)に関連して,無限次元ヒルベルト空間において,オブザーバブルQが可算無限個の点スペクトルをもつ場合と,実数全体Rを連続スペクトルとしてもつ場合について,量子力学的状態が与える確率をQの観測命題に対する真理値付値の上の測度として解釈しようとするときの問題点を検討する。以下において利用する数学の結果の多くは,数学者にとってよく知られている事柄なので,それらの証明は参考文献の該当個所を参照されたい。
著者
石垣 壽郎
出版者
立正大学
雑誌
立正大学文学部論叢 (ISSN:0485215X)
巻号頁・発行日
vol.128, pp.A19-A51, 2009-03
著者
石垣 壽郎
出版者
立正大学文学部
雑誌
立正大学文学部論叢 (ISSN:0485215X)
巻号頁・発行日
no.126, pp.1-27, 2007-09