著者
石塚 和夫
出版者
公益社団法人 日本顕微鏡学会
雑誌
顕微鏡 (ISSN:13490958)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.11-15, 2015-04-30 (Released:2019-09-03)
参考文献数
10

高分解能電子顕微鏡には透過型電子顕微鏡(CTEM)と走査型透過型電子顕微鏡(STEM)がある.現在,どちらのタイプの電子顕微鏡でも最適な条件では原子コラムの並びが観察できる.しかし,電子顕微鏡像から推定された原子構造が正しいこと確認するにはシミュレーションが必要になる.試料の構造情報と顕微鏡の結像情報をシミュレーションプログラムに与えれば,顕微鏡像が表示されるが,CTEMとSTEMでは顕微鏡像に寄与する信号が異なり,電子レンズの効果も異なる.表示された結果を正しく評価するにはシミュレーションの基本的な考え方やアルゴリズムの大枠を理解しておく必要がある.本解説ではマルチスライス法による高分解能電顕像のシミュレーションの基礎的な考え方,特に弾性散乱,熱散漫散乱の計算方法および部分干渉性の取り扱いについて説明する.