著者
石川 恵生
出版者
山形大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

[背景・目的]遺伝毒性影響とは、微細な染色体の障害を検出し、変異原性、がん原性を示す生物学的影響指標であり、簡便かつ鋭敏な試験として「小核試験」が広く使用される。口腔粘膜の小核試験を実施し、また口腔内金属や歯周疾患の状態などを詳細に把握し、歯科領域の要因が口腔粘膜の小核試験にどのような影響を与えるかを明確にし、精度の高い口腔粘膜を用いた小核試験を確立することを目的とした。[対象]仕事や趣味で化学物質に曝露していない男性の健常者97名。[解析方法]小核試験を従属変数、また歯科的要因(口腔内歯科用金属の数、アマルガムの数、レジンの数、ブラッシングの回数、4mm以上のポケットの数、歯科医院通院回数)、年齢、アルコール摂取量、喫煙の有無を独立変数として重回帰分析ステップワイズ法を行った。[結果]重回帰分析ステップワイズ法による多変量解析の結果、小核試験に有意に影響を及ぼす要因としては、年齢のみが採択された(標準回帰係数β=0.45自由度調整R^2=0.20)。歯科的要因についてはいずれも統計学的に有意でなかった。[考察]年齢は過去の報告でも有意な要因として報告されており、本研究でも同様の結果となった。またアルコールや喫煙、そして歯科的要因については、いずれも統計学的に有意な項目とはならなかった。今後は、視診による口腔内充填物・補綴物の把握にとどまらず、血中や毛髪中の金属濃度などを曝露指標にすることでより精度の高い調査を行い、口腔粘膜の遺伝毒性試験と歯科的要因との関連性を調査する必要があると考える。