著者
小見山 章 井上 昭二 石川 達芳
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.379-385, 1987-10-25
被引用文献数
3

岐阜県荘川村の落葉広葉樹林で, バンド型デンドロメータを25種の落葉広葉樹に装着して1985年度の肥大生長の季節的過程を樹種間で比較した。肥大生長の過程を単純ロジスチック曲線に当てはめたところ, 19樹種はこの関係をほぼ満足した。他の6樹種はいずれも小径木にデンドロメータを装着したために, 測定結果のばらつきが大きかった。同曲線のパラメータから肥大生長の開始時期と終了時期, 生長速度が極大となる時期, および生長の立上りの緩急の程度を求めた。その結果, 肥大生長の開始時期はキハダの4月16日が最も早くミズキの6月7日が最も遅かった。ミズナラ, コナラ, クリなどの環孔材樹種の開始時期は散孔材樹種のそれよりも早かった。生長速度が極大となる時期はキハダの6月8日が最も早かったが, 他の樹種のそれは7月の梅雨期に集中していた。生長期間はミズキの81日間が最も短くミズナラの171日間が最も長かった。当地の落葉広葉樹は生長期間が長くしかも緩生長を行う樹種群と, 生長期間が短く急生長を行う樹種群とに分けられた。
著者
石川 達芳 竹内 栄
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.362-368, 1970-12-25

前報では, マツタケの収量と季節的降水量およびマツタケの発生するアカマツ林の土壌の水分状態との間に高い相関関係のあることを報告した。この報告では, 人工灌水することで, マツタケ子実体の収量および林内の微気象が如何に影響を受けるかについて報告する。6基のスプリンクラーを2つの灌水区内に地上3mの高さに設置した。図-1に示されるように1969年8月20日から10月13日の間に, 1区では110.6mm, 2区では53.5mm量の灌水をした。この期間の自然降水量は125.5mmと異常に少なく, 自然降水量と人工灌水量との合計量でも過去10年間の平均降水量より少なかった。表-5に示したとおり, 子実体発生への灌水の効果はかなり顕著であった。すなわち全試験林におけるマツタケ発生本数および生重量は, 豊年であった1968年のそれらの42.6%および27.9%であった。これに対して, 灌水区Iでは本数は95.3%, 生重量は67.3%であり, 灌水区IIでは本数124.2%, 生重量70.5%と本数では豊年並に, 生重量で約70%と著しい増加がみられた。灌水区および対照区における土壌水分の変化を図-1に示した。I区の土壌水分は灌水によって9月16日以後約20%に維持されたが, II区では13〜16%であった。灌水にもかかわらず, 灌水区の土壌水分は豊年時の土壌水分20〜24%(1966〜69年の測定)に比べて少なかった。灌水による気温および地中温度の変化は図4-1〜4-3に示した。灌水に伴って林内気温および地中温度は変化し, 地上1mの気温は4〜6℃ほど, 地中5cmの地温は2℃ほど対照区に比較して低下する。一方地中10cmの地温は, 灌水によって地中5cmの地温に近づくようである。すなわち灌水による冷却効果は, 灌水時の気温・地温と灌水する水温によって左右される。