- 著者
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近藤 大介
加藤 正吾
小見山 章
- 出版者
- 森林立地学会
- 雑誌
- 森林立地 (ISSN:03888673)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.1, pp.9-16, 2008-06-25
- 被引用文献数
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ブナ天然林における維管束着生植物・つる植物の生育環境を明らかにするために,岐阜県白川村のブナ天然林に100m×100mの調査地を設置し,胸高直径50cm以上の樹木に着生・登攀する維管束植物の種名・着生部位を調査し,あわせて森林の上層・下層の維管束植物リストを作成した。調査地には,着生植物43種,付着根型つる植物3種,上層木4種,下層植物99種が出現し,森林全体では111種が存在した。着生植物のうち31種は上層木または下層植物に含まれる種で,調査対象樹木上のみに出現したのは12種であった。調査対象樹木上に生育する着生植物の種数・出現数は,調査対象樹木の胸高直径が大きくなるほど増加する傾向がみられた。着生位置の高さ2〜4mの範囲では積雪の沈降圧により,着生植物が少なかった。高い頻度で出現した4種の着生する高さに着目したところ,ノキシノブ・ホテイシダに比べて,オシャグジデンダ・ヤシャビシャクは調査対象樹木の低い部位に分布していた。また,ヤシャビシャクが主に大枝の分枝点に着生していたのに対して,ほかの3種は幹や枝に多く着生していた。ブナ天然林の大型樹木によって作り出される多様な樹上の構造と環境の垂直分布が,そこに生育する着生植物の空間分布に影響していた。