著者
石川 雄樹
出版者
東京海洋大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では,草食性魚類の植物選択的な食嗜好性の発現機構について明らかにすることを目的として研究を行った.前年度の検討において,ゼブラフィッシュの味覚受容体発現である組織であるmaxillary barbel(ひげ組織)を摘出し培養用ウェルプレート上に接着させることで味質応答機能を有したまま培養維持できることを明らかにした.今年度はまずこの方法がソウギョにおいても適用可能か検討した.麻酔下のソウギョから味蕾を含む組織である口唇の一部を切り出し,次亜塩素酸ナトリウム溶液中で減菌後ゼブラフィッシュと同様の方法で培養を試みたところ,培養2-3日目に組織片から培養プレート底面への細胞の進展・接着が認められ,定着した細胞に対しカルシウムイメージング法による呈味成分への応答性を評価したところ,一部のアミノ酸で応答挙動を示す細胞が認められた.また草食選択性機構への関与が考えられる分子を網羅的に明らかにすることを目的として,口唇上皮組織と,舌から咽頭部分の上皮組織をそれぞれ剥離し,RNA-Seq解析に供しデータを取得した.今年度の期間中には残念ながらソウギョの植物認識成分を特定することができなかったものの,本課題内で確立したソウギョへの近赤外イメージング法による摂食選択性評価法に加え,カルシウムイメージング法による末梢レベルでの細胞応答測定を組み合わせることで,草食性に関わる成分を絞りこみ特定してゆくために必要な基盤を整えることができた.得られた発現データについても両組織間の発現差異およびデータベース上に登録されているソウギョ別組織との発現差異を比較することで特異的発現を示す遺伝子群を明らかにしていくことが今後の課題である.