著者
濱田 信夫 井原 望 石木 茂
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会第53回大会
巻号頁・発行日
pp.89, 2009 (Released:2009-10-30)

一般住宅の浴室の壁面に、4年間貼り付けておいたシリコンについて、その汚染カビに対する次亜塩素酸の効果を調べた。シリコンのカビ汚染は表面から0.5mmまでの部分に主に見られた。カビ汚染したシリコンを1%の次亜塩素酸溶液に1分間浸した場合、表面殺菌はできても、内部の多くのカビは殺菌できず、汚れも依然として多く残存した。汚染カビとしては、Exophiala, Phoma, Scolecobasidium、Cladosporiumなどの暗色のカビが検出された。さらに、10分間浸した場合も、汚れは完全にはなくならなかった。また、ほとんどのカビは死滅するが、しばしば、Phomaだけが生き残こり、その汚れもPhomaによることがわかった。Phomaの胞子は、ExophialaやScolecobasidiumなどの胞子に比較して次亜塩素酸に対する感受性は高いが、胞子が被子器(Pycnidium)に内蔵されているため、殺菌するのが難しいことが分かった。Phomaによるカビ汚染は、シリコンにおいて最も除去しにくいものであるといえよう。この汚染カビは、Phoma herbarum で、ExophialaやScolecobasidiumと同様に、石鹸やシャンプーを栄養とするカビであり、柔らかいシリコン内部で生育し、子器を形成することがわかった。 一般住宅の浴室の樹脂壁やタイルの目地部分にはカビ汚染が多い。ふき取り調査によって、シリコンと軟質樹脂とセメントを比較した場合、一般にセメントにはCladosporiumがより多く、シリコンではPhomaがより多いことがわかった。シリコンの場合には、シリコン内部で多く生育しているPhomaがシリコン表面にも多くの胞子を放出すると思われる。シリコンは一旦カビ汚染すると、除去するのが難しく、予防の重要性が認識された。