著者
石本 明宏 山中 美佳 荒木 由季子
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.87-95, 2007-09
参考文献数
18

2004年2月3日〜4月18日までに搬入された野鳥30種254羽の傷病の種類および死亡または瀕死の原因を病理学的に検索した。傷病の種類は,外部損傷が138例(54.3%),非外傷性の内臓の出血35例(13.8%),病原体の感染26例(10.2%),栄養障害24例(9.4%)およびリンパ組織の障害1例(0.4%)が認められ,30例(11.8%)には著変がなく,46例(18.1%)は材料の劣化により検査不能であった。死亡または瀕死の原因が特定されたものは,143例(56.3%)であり,内訳は,外部損傷による死亡135例(53.1%),感染症5例(2.0%)および栄養障害3例(1.2%)であった。病原体の感染26例の病原体の内訳は,寄生虫13例(50.0%),細菌9例(34.6%),細菌と寄生虫の混合3例(11.5%)および真菌1例(3.8%)であった。感染症により死亡したとみられたものは5例であり,結核様肉芽腫の形成,線虫の多数寄生を伴う筋胃潰瘍,壊死性腸炎,頭蓋骨Airspaceの化膿性炎およびアスペルギルス様真菌による深在性真菌症などがみられた。ウイルス分離を試みた184検体から鳥インフルエンザウイルスおよびニューカッスル病ウイルスは分離されなかった。今回の調査から,傷病野鳥の多くは,人と野鳥の生息環境の接触により発生していること,また,高率に各種病原体を保有していることが示唆された。今後,さらなる検討のためには,日頃からのモニタリング検査が重要である。