著者
吉田 純子 石橋 隆治 西尾 眞友
出版者
金沢医科大学
雑誌
金沢医科大学雑誌 (ISSN:03855759)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.420-426, 2005-12

細胞内Ca^<2+>イオンは筋収縮,分泌,および細胞の増殖・分化などの情報伝達において重要な二次メッセンジャーとして働いている。その細胞内濃度の恒常性は,細胞膜に存在するCa^<2+>透過性イオンチャネルやイオントランスポーターおよび細胞内Ca^<2+>貯蔵部位からの遊離や取り込み機構によって保たれる。高血圧,狭心症,不整脈の治療薬の一つであるCa^<2+>括抗薬は電位依存性L型Ca^<2+>チャネルに結合し,細胞内へのCa^<2+>流入を抑えて血管平滑筋や心筋細胞の興奮性を低下させる。しかし,近年,ある種のCa^<2+>拮抗薬がL型Ca^<2+>チャネル遮断ではなく,抗酸化作用や血管平滑筋の増殖抑制作用を介して動脈硬化や血管再狭窄に対する予防効果を示すことが明らかにされてきた。また,がん細胞に対する増殖抑制作用も報告され,ヒトがん細胞を用いた我々の基礎的研究結果からもCa^<2+>拮抗薬のがん細胞増殖抑制作用が示唆されている。本総説では,Ca^<2+>拮抗薬の多様な薬理作用,特に細胞増殖抑制作用について概説し,細胞内Ca^<2+>濃度を調節する分子群が,抗動脈硬化薬や抗腫瘍薬の新しい分子標的となる可能性を展望した。