著者
乾 秀之 塩田 憲明 石毛 光雄 大川 安信 大川 秀郎
出版者
日本育種学会
雑誌
Breeding science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.135-143, 1998-06-01
参考文献数
31

ラットP4501A1とラットP4501A1及び酵母還元酵素との融合酵素を発現したトランスジェニックバレイショをアグロバクテリウム感染法により作出することを試みた。ラットP4501A1cDNAとラットP4501A1及び酵母還元酵素との融合酵素cDNAをカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターとノバリン合成酵素ターミネーターとの間にそれぞれ挿入した発現プラスミドpGC12とpGFC2を用いた。これらをバレイショマイクロチューバーに感染し,P4501A1を導入した2系統(GC系統)と融合酵素を導入した11系統(GFC系統)をカナマイシン耐性などにより選抜した。サザンプロット分析により,1個体のGC系統と10個体のGFC系統において,そのゲノムDNAに1から5個のP450cDNAもしくは,融合酵素cDNAに対応するバンドの存在を確認した。ノザンプロット分析において,GC系統のNo.1160個体において1.6kbの長さに相当するP450mRNAの存在を確認したが,GFC系統のNo.1167個体では融合酵素mRNA量はわずかであることが判明し,その他では検出できなかった。ウエスタンプロット分析の結果,No.1160個体においてP450に相当する59kDaのタンパクの存在が確認されたが融合酵素発現系統では確認されなかった。7-エトキシクマリンO-脱エチル化活性とチトクロームC還元活性を測定した結果,形質転換体ではコントロールに比べ1.4から3.5,1.3から3.5倍それぞれ高い活性を示した。^14Cラベルした除草剤クロロトルロンを用いた代謝実験では,形質転換体はクロロトルロンをN-脱メチル化とp-メチル水酸化を通して除草活性の低い化合物に代謝していることが明かとなった。除草剤クロロトルロンとDCMUを散布したところ,形質転換体はコントロールに比べ強い耐性を示した。このように,ラットP4501A1cDNAの発現により,バレイショにフェニルウレア系除草剤の代謝能と,それらに対する耐性を与えることができた。