著者
大川 秀郎 辻井 久恵 下地 みゆき 今宿 芳郎 今石 浩正
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.197-203, 1999-05-20
参考文献数
39
被引用文献数
3

チトクロームP450モノオキシゲナーゼは農薬などの外来性化合物の解毒または活性化に, 並びに, 殺菌剤, 植物成長調節剤, 殺虫共力剤, 除草剤セイフナーなどの作用点として重要である.最近のゲノムプロジェクトの成果により, P450遺伝子は生物界のバクテリア, プロトゾア, 植物, 動物, 糸状菌のすべてに分布しており, 動物や植物の種には多くの遺伝子が存在することが明らかになった.特に, モデル植物であるシロイヌナズナには約400の遺伝子が存在すると推定されている.これらP450酵素の生化学的性質を明らかにすることが, 生理学的な役割の解明に重要である.高等植物では, シロイヌナズナT-DNA変異株を用いた研究が生理学的な役割の解明に有効であり, また, 酵母を用いた遺伝子発現系は実際に酵素機能の解明に広く用いられている.さらに, 薬物代謝に係わるP450分子種を発現したトランスジェニク植物の作出は, 除草剤選択性植物やファイトレメディエーション用植物の育成に重要である.
著者
貞包 眞吾 酒井 智代 林 明子 大川 秀郎
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.410-413, 1998-11-20 (Released:2010-08-05)
参考文献数
9
被引用文献数
2

カーバメイト系除草剤クロルプロファム (IPC) の免疫化学測定法を確立した. パプテンとしてIPCのカルボン酸誘導体 (IPC-COOH) を合成し, それを牛血清アルブミンに結合させて免疫原を調製し, この免疫原をウサギに免疫して抗血清を得た. 調製した抗血清とマイクロプレート上の抗原 (IPC-COOHとウサギ血清アルブミンの結合体) との結合をIPCは競合的に阻害した. 次いで, プレートに結合した抗体の量を酵素標識抗ウサギIgGヤギ抗体を用いて求める方法によりIPCのELISAを確立した. IPCによる抗原抗体反応の50%阻害および検出限界濃度はそれぞれ140ppbおよび5ppbであった. 得られた抗体のカーバメイト系やウレア系の農薬に対する交差反応性は極めて低かった. この方法はジャガイモ中のIPCの測定に適用することができた. ジャガイモ中のIPCはメタノールにより抽出し, メタノール抽出液を20倍に希釈した後, 測定した. その検出限界濃度は0.3ppmであった.
著者
三原 一優 磯部 直彦 大川 秀郎 宮本 純之
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.307-316, 1981-08-20

フェニトロチオン, ダイアジノンおよびメチルパラチオンの中毒量を雌雄ラットに1回もしくはフェニトロチオンの中毒量を連続経口投与したのち, 肝ミトコンドリアの呼吸機能および肝ミクロゾームの薬物代謝酵素活性に及ぼす影響をしらべた.250mg/kgのフェニトロチオン投与によりミトコンドリアの呼吸調節率が投与24時間後にわずかに低下したが, ADP/O比およびATPase活性に対する影響はみられなかった.ミクロゾームのチトクロームP-450含量およびアニリン水酸化, アミノピリンN-脱メチル化両活性は, いずれの有機リン化合物によっても投与1時間から72時間にかけて著しく低下した.しかしながら, このようなミトコンドリアとミクロゾームへの影響はいずれも投与72時間から1週間後には元のレベルにまで回復し, 可逆的であることが判明した.また, フェニトロチオンの5mg/kg, 25mg/kgを12週間連続投与した場合にはミクロゾームの薬物代謝酵素系に対する影響はみられなかった.
著者
乾 秀之 塩田 憲明 石毛 光雄 大川 安信 大川 秀郎
出版者
日本育種学会
雑誌
Breeding science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.135-143, 1998-06-01
参考文献数
31

ラットP4501A1とラットP4501A1及び酵母還元酵素との融合酵素を発現したトランスジェニックバレイショをアグロバクテリウム感染法により作出することを試みた。ラットP4501A1cDNAとラットP4501A1及び酵母還元酵素との融合酵素cDNAをカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターとノバリン合成酵素ターミネーターとの間にそれぞれ挿入した発現プラスミドpGC12とpGFC2を用いた。これらをバレイショマイクロチューバーに感染し,P4501A1を導入した2系統(GC系統)と融合酵素を導入した11系統(GFC系統)をカナマイシン耐性などにより選抜した。サザンプロット分析により,1個体のGC系統と10個体のGFC系統において,そのゲノムDNAに1から5個のP450cDNAもしくは,融合酵素cDNAに対応するバンドの存在を確認した。ノザンプロット分析において,GC系統のNo.1160個体において1.6kbの長さに相当するP450mRNAの存在を確認したが,GFC系統のNo.1167個体では融合酵素mRNA量はわずかであることが判明し,その他では検出できなかった。ウエスタンプロット分析の結果,No.1160個体においてP450に相当する59kDaのタンパクの存在が確認されたが融合酵素発現系統では確認されなかった。7-エトキシクマリンO-脱エチル化活性とチトクロームC還元活性を測定した結果,形質転換体ではコントロールに比べ1.4から3.5,1.3から3.5倍それぞれ高い活性を示した。^14Cラベルした除草剤クロロトルロンを用いた代謝実験では,形質転換体はクロロトルロンをN-脱メチル化とp-メチル水酸化を通して除草活性の低い化合物に代謝していることが明かとなった。除草剤クロロトルロンとDCMUを散布したところ,形質転換体はコントロールに比べ強い耐性を示した。このように,ラットP4501A1cDNAの発現により,バレイショにフェニルウレア系除草剤の代謝能と,それらに対する耐性を与えることができた。