- 著者
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都野 展子
石田 幸恵
矢吹 彬憲
- 出版者
- 日本衛生動物学会
- 雑誌
- 日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第63回日本衛生動物学会大会
- 巻号頁・発行日
- pp.47, 2011 (Released:2014-12-26)
サハラ以南アフリカで主要なマラリア媒介蚊である2種Anopheles gambiae とAn. arabiensisの幼虫繁殖場所の生産性を決める環境要因は何かについて近年研究が進められている.従来よりこの2種の幼虫繁殖場所の特徴は、短命な浅い水溜りであることが認識され報告されてきていたが、Tunoら(2006)は緑藻類(特にRhopalosolensp.)が幼虫の餌として重要であることを示した.本研究は、Anopheles gambiaeとAn.arabiensisの2種の幼虫の生息する水体に発生する他の生物群集を評価しながら、その水体の特徴、とりわけ藻類とその水体の物理化学的特徴を評価し、生物的・無生物的な環境変量と幼虫個体数の関係を解明することを目的として、本研究を行った.方法:ケニア西部の水溜りから、水を採集し、動物群集・生産者である藻類群集・水体サイズ・陽イオン成分・陰イオン成分・酸素同位体比δ18Oなど物理化学的な特徴を調査した.結果:調査に費やした2008年と2009年で水溜りの性質はかなり異なっていた.2008年は水溜りが出来るのを見ながら採水を進め、2009年は乾いていく水溜りからの採水となった.δ18O値の性質や実用性を検証した結果,δ18O値は降雨以外に、水体の個性(形状・土壌の質・水の供給源)に影響されているとわかった.ガンビエ幼虫に関係するさまざまな環境要因は水の古さによって大きく異なった.2008年の新しく出来た水溜りのみ、卵に乾燥耐性がある種が見られ、2009年の長期間存在していた水溜りでは、甲虫目や半翅目など比較的成長に時間がかかる種が多く存在していた.考察:ガンビエ幼虫密度と環境要因の結果では、生産者との関係として、水の古さにより幼虫密度と重要な藻類は異なっていたが、Rhopalosolen sp.は両年で重要性が証明された.ガンビエ密度は新しい水体では生産性の高い水体にニッチの近い生物種と同時に発生すると考えられた.古い長期間存在する水体では捕食圧が重要であったことが示唆された.