著者
田中 千尋 大澤 直哉 吹春 俊光 都野 展子 都野 展子 吹春 俊光 BUCHANAN Peter JOHNSTON Peter TOFT Richard DICKIE Ian 門脇 浩明
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では,ニュージーランドにおいて同地固有種であるナンキョクブナ林において, 外来菌根菌ベニテングタケの侵入・発生状況を調査するとともに, 侵入の原因ならびに他森林生物に与える影響を明らかにしようとした.調査の結果, 同地には複数の系統のベニテングタケが移入し,雑種化が進んでいること, 人為的かく乱が著しいあるいは人工植栽地などを中心に分布拡大が進んでいること, 古くから発生が認められるサイトでは,同地固有のキノコバエ種がベニテングタケを利用するようになっていることが明らかになった.
著者
北林 慶子 都野 展子 保坂 健太郎 矢口 行雄
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.69-76, 2016-05-01 (Released:2016-08-17)
参考文献数
28

双翅目幼虫は子実体内に多数かつ頻繁に観察されるがその生態は,ほとんど研究されておらず,双翅目幼虫は胞子散布者として機能し得るか否か不明である.本研究では,ハラタケ型子実体内部に生息する双翅目幼虫の生態について,幼虫の子実体内部での摂食対象組織と幼虫による消化が胞子に与える影響を消化管内胞子の外部形態を詳細に観察することによって調べた.ハラタケ亜門4目16科23属114個の子実体から幼虫を3798個体採集した.解剖した幼虫172個体のうち,103個体の消化管内に胞子が存在した.顕微鏡下で消化管内胞子の外部形態に変化は確認されず,トリパンブルー染色においても,対照群胞子より消化管内胞子は6~11%損傷率が高かったが80%程度の胞子は無傷であった.以上より,双翅目昆虫の幼虫による子実体中での胞子摂食が高頻度で起きていること,幼虫の消化管内の胞子の多くはほとんど物理的損傷を受けていないことが示された.
著者
比嘉 由紀子 津田 良夫 都野 展子 高木 正洋
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.205-209, 2000
被引用文献数
4 16

1998年9月, 長崎大学熱帯医学研究所敷地内で家屋周辺の茂み及び裸地においてヒトスジシマカの24時間採集を行い, 周辺環境の異なる採集場所における吸血活動性と密度のちがいを調べた。ヒトスジシマカの密度は茂みで高く, 屋内や裸地で低かった。吸血活動は薄明薄暮に高まり, 夜も高かった。最も活動性が高い薄暮には, 統計的な有意差はみられないが, 昼間や夜間に比べて屋内や裸地で採集される雌個体の割合が高かった。以上の結果からヒトスジシマカの生態における夜間の吸血活動の重要性と薄明薄暮には茂み以外に裸地や屋内などでも吸血される機会が増加することが示唆された。
著者
都野 展子 石田 幸恵 矢吹 彬憲
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第63回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.47, 2011 (Released:2014-12-26)

サハラ以南アフリカで主要なマラリア媒介蚊である2種Anopheles gambiae とAn. arabiensisの幼虫繁殖場所の生産性を決める環境要因は何かについて近年研究が進められている.従来よりこの2種の幼虫繁殖場所の特徴は、短命な浅い水溜りであることが認識され報告されてきていたが、Tunoら(2006)は緑藻類(特にRhopalosolensp.)が幼虫の餌として重要であることを示した.本研究は、Anopheles gambiaeとAn.arabiensisの2種の幼虫の生息する水体に発生する他の生物群集を評価しながら、その水体の特徴、とりわけ藻類とその水体の物理化学的特徴を評価し、生物的・無生物的な環境変量と幼虫個体数の関係を解明することを目的として、本研究を行った.方法:ケニア西部の水溜りから、水を採集し、動物群集・生産者である藻類群集・水体サイズ・陽イオン成分・陰イオン成分・酸素同位体比δ18Oなど物理化学的な特徴を調査した.結果:調査に費やした2008年と2009年で水溜りの性質はかなり異なっていた.2008年は水溜りが出来るのを見ながら採水を進め、2009年は乾いていく水溜りからの採水となった.δ18O値の性質や実用性を検証した結果,δ18O値は降雨以外に、水体の個性(形状・土壌の質・水の供給源)に影響されているとわかった.ガンビエ幼虫に関係するさまざまな環境要因は水の古さによって大きく異なった.2008年の新しく出来た水溜りのみ、卵に乾燥耐性がある種が見られ、2009年の長期間存在していた水溜りでは、甲虫目や半翅目など比較的成長に時間がかかる種が多く存在していた.考察:ガンビエ幼虫密度と環境要因の結果では、生産者との関係として、水の古さにより幼虫密度と重要な藻類は異なっていたが、Rhopalosolen sp.は両年で重要性が証明された.ガンビエ密度は新しい水体では生産性の高い水体にニッチの近い生物種と同時に発生すると考えられた.古い長期間存在する水体では捕食圧が重要であったことが示唆された.
著者
津田 良夫 沢辺 京子 高木 正洋 杉山 章 江下 優樹 都野 展子
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

野外のネッタイシマカ集団が有する斑紋変異の現状をベトナム、インドネシア、ラオス、シンガポール、フィリピン、タイを調査地として調べた。その結果大陸に位置する調査地(ベトナム、タイ、ラオス)では、体色の黒い個体が集団の95%以上を占めていることがわかった。これに対して島嶼に位置する調査地(フィリピン、インドネシア)では白色化した個体の割合が高く変異の幅も広いことがわかった。インドネシア、ベトナム、タイで採集された個体を親世代として、それぞれの集団に対して体色のより黒い個体あるいはより白い個体の人為淘汰を行った結果、どの地域の集団からも黒色個体と白色個体を選抜することができた。スラバヤの集団より選抜された黒色系統と白色系統を用いて、個体群形質の比較を行った。その結果、(1)白色系統は黒色系統に比べて発育が遅い、(2)砂糖水だけで飼育したときの寿命はほぼ同じ、(3)繰り返し吸血させ産卵させた場合は白色系統の寿命の方が短い、(4)成虫の令別生残率と令別産卵数とから求めた繁殖能力は黒色系統の方が大きいことがわかった。白色系統と黒色系統の産卵場所選択について調べるために、インドネシア・アイルランガー大学の動物舎でmark-release-recapture実験を行った。黒色個体は放逐場所に最も近い屋内に設置したオビトラップに集中的に産卵したが、約40m離れた屋外のオビトラップにも産卵していた。一方白色個体は動物舎内の比較的明るい場所に設置したオビトラップにより多く産卵し、屋外のトラップへの産卵はごくわずかであった。野外集団のデング熱ウイルス媒介能力を成虫のトラップ調査によって実施するためには二酸化炭素源が必要であり、簡便に二酸化炭素を発生できる装置を考案し定期調査を実施した。
著者
林 利彦 都野 展子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.357-359, 1998
被引用文献数
2

キノコ類より発生した日本産フンコバエ科(改称)7種を記録した。日本においてフンコバエ類がキノコより発生した例は従来知られておらず, 今回が初めての記録である。フンコバエ類と発生したキノコ種は以下のとおりである。アシマダラオオフンコバエ, 新称Crumomyia annulus (Walker), キララタケ;ヤマトオオフンコバエ, 改称(マダラオオハヤトビバエ)C. nipponica (Richards), アミガサタケ;アシジロツヤホソフンコバエ, 新称Minilimosina (Svarciella) furculisterna (Deeming), キララタケ;モリフンコバエ, 新称Paralimosina japonica Hayashi, アミガサタケ;ヒメフンコバエ, 改称(ヒメハヤトビバエ)Spelobia luteilabris (Rondani), キララタケ・ヒトヨタケ・オオイチョウタケ・シカタケ;ホソカドマルフンコバエ, 改称(ホソカドマルハヤトビバエ)Terrilimosina longipexa Marshall, キララタケ;コガタカドマルフンコバエ, 改称(コガタカドマルハヤトビバエ)T. nana Hayashi, キララタケ。なお本科の科名には従来ハヤトビバエ科という和名が使われてきたが, 飛翔力が非常に弱い本科には実体に合わないので, 英名Lesser dung flyにちなみ, フンコバエ科という和名を新たに提唱した。