著者
新井 康通 広瀬 信義 川村 昌嗣 本間 聡起 長谷川 浩 石田 浩之 小薗 康範 清水 健一郎 中村 芳郎 阪本 琢也 多田 紀夫 本間 昭
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.202-208, 1997-03-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
22
被引用文献数
3 5

東京都在住の百寿者45名 (男15例, 女30例, 平均年齢101.1±1.4歳, mean±SD, 以下同じ) の血清脂質値, アポ蛋白A1 (以下アポA1と略す), アポ蛋白B (以下アポBと略す), リポ蛋白分画, 低比重リポ蛋白 (以下LDLと略す) 分画の被酸化能を測定し, 健常な若年対照群と比較検討した.百寿者では対照群に比べ, 総コレステロール (以下TCと略す), 高比重リポ蛋白コレステロール (以下HDL-Cと略す), アポA1, アポBが有意に低値を示した. アポBが60mg/dl以下の低アポB血症の頻度は対照群の2.3%に対し, 百寿者では23%と有意に高かった. 各リポ蛋白分画中のコレステロール濃度は超低比重リポ蛋白コレステロール (以下VLDL-Cと略す), LDL-C, HDL-C, のいずれにおいても百寿者で有意に低かった. HDLの亜分画を比べると百寿者で低下していたのはHDL3-Cであり, 抗動脈硬化作用を持つHDL2-Cは両群で差がなく, 百寿者の脂質分画中に占めるHDL2-Cの割合は有意に増加していた. LDLの被酸化能の指標である lag time には有意差を認めなかった (百寿者44.7分±31.8対対照群49.9±26.0分). 百寿者を日常生活動度 (以下ADLと略す) の良好な群と低下している群に分け, 脂質パラメータを比較したところ, ADLが良好な群でHDL3-Cが有意に高値を示していた. 認知機能を Clinical Dementia Rating (以下CDRと略す) によって正常から重度痴呆まで5段階に評価し, 各群の脂質パラメータを比較したところ, 中等度以上の痴呆群でHDL-Cが正常群に比べ有意に低下していた.百寿者はアポBが低く, HDL2-Cが比較的高値であり, 遺伝的に動脈硬化を促進しにくい脂質組成を示すことが明らかとなった.
著者
本間 聡起 石田 浩之 広瀬 信義 中村 芳郎
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.380-387, 1994
被引用文献数
6

首都圏1都3県の百寿者を対象に郵送によるアンケート調査を行い, 389名 (男性81, 女性308) の生存百寿者からの回答を得た. 対象の約3割が入院または施設入居者であったが, その比率は男性15%に対し, 女性34%で女性に多い傾向であった. 日常行動範囲では, 散歩もできるとの回答は男性38%に対し, 女性10%であり, 逆にほとんど寝たきり, または寝たきりは男性19%に対し女性28%で, 男性の方が活動度が高い傾向がみられた. この男女差は, 在宅者に限った検討でも同様であった. 現病歴・既往歴では, 高血圧症が有効回答の22%にみられ, 以下, 呼吸器疾患, 心疾患がともに16%であった. 骨折も31%に認められたが, 男性20%に対し, 女性34%で女性に多くみられ, 日常の活動範囲における男女差の一因となっている可能性が示唆された. 百寿者の最終学歴については男性の27%, 女性の8%が高等教育レベルであり, 高学歴の傾向であった. また, 百寿者の両親の死亡年齢は, 父親69.6±15.7歳, 母親71.2±17.2歳で, 同時期の生命表と比較すると長寿の傾向であった. また同胞についても, 全同胞の死亡ないし生存年齢がすべて記載されている203家系について検討した結果, 65歳以上の老人の中で90歳を達成した人の割合は, 17.3%であり, 百寿者家系に長寿者が集積している可能性が示唆された.