著者
稲田 秀洋 古川 欣也 石田 順造 斎藤 誠 加藤 治文
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.111-115, 2007
被引用文献数
6

背景.気管支動脈塞栓術(BAE)は内視鏡下に止血が不能な症例の有効な治療法として広く行われているが,突然の多量な気管支出血に対して早急にBAEを行うことは,患者の状態および病院の体制からも困難である場合が多い.今回,我々は続発性難治性気胸,肺瘻,有瘻性膿胸に対して末梢からの気漏を止め病態を改善させるために開発されたEndobronchial Watanabe Spigot (EWS)を用いて,出血をコントロールした再発肺癌症例の1例を経験した.症例.63歳男性.左S^8と左S^<1+2>の多発肺癌で左下葉切除術・リンパ節郭清術および左上葉肺部分切除術を施行した.術後7ヶ月目に多量な喀血を認め,土曜日午後6時に救急外来受診.緊急内視鏡施行したところ,左B^3からの持続する多量の出血を認めた.出血の吸引,ボスミン生食とトロンビン溶液の散布による止血を約1時間繰り返したが止血できないため,急濾EWS(M)1個を左B^3aに充填したところ内視鏡的に止血できた.2日後にBAEを施行し,完全に止血した.結語.EWSは難治性気胸,肺瘻を閉鎖する目的で開発されたシリコン製の充填材であるが,コントロール困難な気管支出血のコントロールにも有用である可能性が示唆された.