著者
出口 英樹 大前 慶和 石走 知子
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学総合教育機構紀要
巻号頁・発行日
no.3, pp.13-25, 2020

大学の学部段階(学士課程)において、学位プログラムや学部横断型プログラムなど、新しい試みが始まっている。これは、ディシプリン(学問領域)に即して構築された学部・学科等に準拠する旧来の学士課程とは大きく異なるものである。だが、そのような取り組みの実効性については充分な検証がなされているとは言い難い。そこで本稿では、学部・学科におけるカリキュラムの標準的な履修モデルにおける学びを「縦の学び」、学部・学科を越えた領域横断的な(あるいはディシプリン横断型の)学びを「横の学び」と定義し、「『縦の学び』と『横の学び』には相乗効果が期待できるのではないか」との問いを立て、その検証を試みる。具体的には、2017年度より鹿児島大学が設置した「地域人材育成プラットフォーム」に着目する。これは同大学において地域人材を育成するために学部を横断して学びを展開する枠組みである。これに携わる学生は、それぞれの学部・学科等に所属しつつ、様々な地域の学びをも経験する。このような学生が、地域の学びとして得るものがあるのは勿論のこと、その地域の学びが自身の学部・学科等での学びに対してどのように影響するのか調査する。すなわち、これは学部横断型教育プログラムの意義を探ることのみを目的とするものではなく、むしろそのような学部横断型の学び(延いてはディシプリンを越えた学び)が、学士課程そのものにどう影響するのか、どのような意味があるのか、それを検証することが目的である。