著者
日向 泰樹 中村 成伸 石野 外志勝 川上 一雄
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.102, no.3, pp.591-594, 2011-05-20

患者は66歳,男性.糖尿病にてインスリン療法中であった.2009年10月24日右腹部腫瘤,右腰部痛を主訴に当院受診,腹部造影CTにて右腎下極に122×90×87mm大の多房性嚢胞性腫瘤を認め,疼痛管理,加療目的にて入院となった.腫瘤は腸腰筋,上行結腸,十二指腸など広範囲に癒着,浸潤が疑われた.CTでの嚢胞内のdensityの上昇,炎症反応高値,発熱を認め,嚢胞性腎細胞癌の感染が考えられたが,広範囲に浸潤していると考えたため,切除不能と判断し,嚢胞の穿刺ドレナージを施行,抗菌薬治療を開始した.穿刺液の培養でE.coliが検出された.抗菌薬治療後,解熱し,炎症反応は低下した.11月9日腹部CTで嚢胞性病変は84×49×47mm大にまで縮小,嚢胞部分はほぼ消失し,充実性部分のみが残存した.同日撮影した腹部造影MRIでは,充実性の腫瘍性病変を認め,腸腰筋浸潤を認めたが,上行結腸とは接しているものの境界を認め,明らかな浸潤は認めなかった.以上より切除可能と判断し,11月18日根治的右腎摘除術を施行した.腎背側は腸腰筋と,腹側は上行結腸と強固に癒着しており,上行結腸の一部を合併切除した.病理組織学的所見ではMichaelis-Gutmann小体(M-G小体)が観察され,マラコプラキアと診断された.術後経過は良好にて12月1日退院となった.その後再発を認めず,外来にて経過観察中である.