著者
田中 厚吏 石﨑 直彦 宮地 隆史 栢下 淳
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.34-43, 2023-04-30 (Released:2023-09-10)
参考文献数
25

【目的】神経筋疾患患者の嚥下造影検査を後方視的に調査し,ゼリー・とろみ付き液体における物性の差異による誤嚥や咽頭残留との関連を調査した. 【方法】対象者は,嚥下造影検査(VF)を実施した神経筋疾患患者で診療録から後方視的に調査した.調査項目は基本情報としてVF 実施時点の年齢,身長,体重,BMI,摂食状況,食事形態を調査した.VF 側面像から固さ5,000 N/m2 および8,500 N/m2 の異なるゼリー,薄いとろみ(粘度116.6 mPa・s)および中間のとろみ(粘度276.8 mPa・s)の検査食を用い,誤嚥の有無,咽頭残留の有無を調査した.統計解析は,検査食の誤嚥・咽頭残留の比較にはχ2検定,Fisher の正確確率検定を用いた.また,誤嚥・咽頭残留の有無における年齢・BMI の比較にはt 検定を用いた. 【結果】期間中にVF を実施した65 名(男性:28 名,女性:37 名)を解析対象とした.誤嚥は検査食間で有意な差は認めなかった.喉頭蓋谷残留は,ゼリー5,000 N/m2 に比べ薄いとろみのほうが有意に少なく(p<0.05),ゼリー8,500 N/m2 では,中間のとろみおよび薄いとろみのほうが有意に残留が少なかった(p<0.05,p<0.01).梨状窩残留は,ゼリー5,000 N/m2 に比べ,薄いとろみのほうが有意に少なかったが(p<0.05),その他の物性間で差はみられなかった. 【結論】神経筋疾患患者における食品物性の違いによる誤嚥・咽頭残留との関連を調査した結果,咽頭残留の観点からは薄いとろみ程度の液体が適切である可能性が示唆された.