著者
梶 克彦 磯村 奎介 高井 飛翔
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.235-245, 2021-01-15

歩行者のステップ認識は,屋内位置推定の一手法である歩行者自立航法(PDR)の構成要素として利用されているほか,歩数計・活動量計といったヘルスケアアプリケーションの根幹を担っている.ステップ認識には,歩行の際にセンサ信号が顕著に周期的な変化を示す加速度センサを用いるのが一般的である.我々はその代替として,角速度や磁気センサによって腰回転をとらえてステップ認識を行う手法を提案してきた.本稿では気圧センサを利用したステップの認識を行う手法について提案する.我々はスマートフォンを手持ちして意識的に腕振りをした場合,密閉型の腰巻きケースにスマートフォンを装着した場合,ズボンのポケットに装着した場合などについて,気圧センサの値が歩行にともなって周期的に変化する現象を発見した.この周期的な変化を,デジタルフィルタ・極値発見・閾値処理といった単純なアルゴリズムでとらえてステップ認識を行う.評価実験によって,推定誤差7.5%程度のステップ推定が可能であると確認できた.このような代替センサによるセンシングは,デバイスやシステム構成時に必要となるセンサ数の削減による省電力化,デバイス小型化,コンピュータリソースの開放につながる.たとえば活動量計は歩数や階段昇降といった情報から計算できるため,従来の活動量計はステップを加速度センサから取得し階段昇降は気圧センサから取得するが,本研究の成果を導入すれば,気圧センサのみによる活動量計の実現が期待できる.