著者
伊藤 良子 磯邉 厚子 植村 小夜子
出版者
京都市立看護短期大学
雑誌
京都市立看護短期大学紀要 (ISSN:02861097)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.89-100, 2013-02-01

近年の日本での「低出生体重児」と「死産」に関する研究の動向とそのEBM を明らかにすることを目的に文献検討を行った.日本国内での過去全年(1982 以前〜現在)の文献を対象として,医中誌Web で「低出生体重児」「死産」に影響する要因についての文献検索を行い,さらにそれらの内容を検討し研究動向を明らかにした.その結果文献13 件が分析対象となり,分析疫学的研究から有意の関連性が導き出されている19 件の項目と62 件の因子を抽出し整理した.特に「児の出生時体重の増加」との正の関係では,母親の非妊娠時BMI・母親の非妊娠時BMI18.67 以下・母親の非妊娠時体重増加・母親の1 週間実質体重増加量の増加・喫煙する母親の妊娠前BMI の増加・分娩週数の増加・母親の妊娠中体重増加量の増加・母親の年齢の増加・母親の年齢34 才以上・初産婦・血清抗体LA 陽性を抽出した.また「児の出生時体重の増加」との負の関係では,妊娠初期の喫煙・父母の習慣的喫煙・喫煙する母親の習慣的喫煙・父母の習慣的飲酒・早産・在胎週数37 〜 39 週・胎児数増加・身長150 cm以下・20 歳以下・母親への夫婦間暴力(監視・性行為強要)有りを抽出した.また,流死産と有意の正の関連がある因子としては,「母親の習慣的喫煙あり」が抽出された.なお「低出生体重」は,世界的に多くの研究で「児の成長後の様々な疾病」のリスク因子であることが示されており,日本の現在および長期的な保健政策の上でも重要課題である.