著者
秦 美沙 萬代 新太郎 森 崇寧 太田 潤 吉嶺 朝陽 安藤 史顕 須佐 紘一郎 飯盛 聡一郎 磯部 清志 内藤 省太郎 蘇原 映誠 賴 建光 岡戸 丈和 内田 信一
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.689-696, 2021 (Released:2021-12-28)
参考文献数
15

経口さらには静注投与可能なカルシミメティクスの登場によって慢性腎臓病に伴う二次性副甲状腺機能低下症の治療戦略は近年劇的に変化した.カルシウム(Ca),リン,副甲状腺ホルモン(PTH)の指標範囲値達成率の向上や副甲状腺摘出術の回避という恩恵は極めて大きい.しかしながらわれわれは最近,エテルカルセチドの過剰投与によって高Ca血症を呈した維持血液透析患者の3例を経験した.症例はおのおの38歳男性,62歳男性,66歳女性で,いずれもintact PTH≦21 pg/mLと低回転骨が先行する中,経口ないし静注活性型ビタミンD製剤の中止後にも血清補正Ca濃度が上昇を続け12 mg/dLを超えた.低回転骨下のエテルカルセチド投与が無形成骨様の病態を惹起しCa緩衝系が破綻したことで高Ca血症をきたしたと考えられた.エテルカルセチドは腎疾患特有の骨病態を理解した上で適正使用されることが望まれ,注意喚起を兼ね報告する.