著者
礒島 知也
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

原子気体ボーズ凝縮体中の渦糸についての研究を行った。この凝縮体では、これまでに、2本の渦糸がそれぞれ螺旋状の配置をとる構造や、4本の渦糸が同一面内に平行に並んだ配置をとる構造が実現されている。これらに対する理論的研究をこれまで行ってきたが、それをさらに進めて、2本の渦糸が鎖状の配置をとる構造や、4本の渦糸が編目状の配置をとる構造を実現するための、理論研究を行った。どのような構造が発生するかは、ボゴリューボフ方程式の固有値と固有ベクトルを調べることでおおよそ予測できることを示し、その固有値等の性質によると、実験のための最適な条件は、原子気体凝縮体の、線密度の最大値を調節することで得られることがわかった。また、凝縮体を非調和型トラップに閉じ込めた場合には、凝縮体内の比較的広い範囲で、渦糸が鎖状や編目状の配置をとれることを示した。それらの情報を元に、実現可能な原子数や閉じ込めトラップの配置で、三次元空間で渦糸の位置の時間変化をシミュレーションし、鎖構造と網目構造ができることを数値的に示した。この研究内容の一部は、これまでに国内の学会で発表していたが、今回新たに、渦糸2本や4本からなる構造、ねじれ構造と鎖状構造といった空間配置のパターンごとに、それを実現するための条件を整理し、より精度を上げた数値計算を行って論文として発表した。これによって、海外の研究者に向けても、このような多様な構造の可能性を指摘することができた。